第9話 魅せる用と作業用のメイド服は違うんだよ‼
確かに大魔王は勇者に選定されているから本人は穏やかで、かなりの人格者なのかもしれないけど、その性質がそのまま部下にも行き渡っているかと言われればそれはノーだ。
第一、四天王だか六大魔王だかを名乗る強力な魔族は町々を襲ったと聞いている。
あれ?
ここまで考えてふと足を止める。
「おや、どうしました?」
今度は反対にリリアが立ち止まった件について訊ねて来る。
「う~ん……ふとこれまで六体の魔王による被害を思い出していたんだけどさ」
「何か気になる点でもありました?」
思い違いかもしれないし、単に俺には詳細の報告がなされていないだけかもしれないが、と前置きをしてリリアに知っている状況を伝える。
「王国側の被害ってさ、勇者に選定された人――俺の腹違いの兄貴たちとかさ。それと勇者についていって戦いを挑んだ兵士しかいないんだよな」
国家が自らの土地だと主張している場所に突如現れて無断で建築物を造る行為、それは人間同士の約束事であって、魔族はそこに含まれないのでは?
むしろ彼らは人間側に配慮して、人が住む土地――つまり町を無理やり武力で自分たちのモノにせず――あれ?
魔族、悪くなくね?
「じゃあそこも大魔王に聞いてみましょう」
どんだけ肝っ玉太いんだよこの子。
「さぁ行きましょう、リオン様」
「あ、ああ――」
ひとまず裏門から侵入し、少し歩いた場所にある通用口をそっと開ける。
「いらっしゃいませ」
「⁉」
扉の先には、待ち構えていたメイド服姿の女性が。
このパターン、既視感があるなぁ――。
だが、明確に相違点がある。
まず、数日前のリリアのそれはミニスカ半そでの『魅せるため』のメイド服。
一方、今目の前にあるのはロングスカートで、フリル等の装飾がない機能的なデザインで、作業用のメイド服だ。
「ええっと、自分で言うのもアレですが俺ら明らかに不法侵入の不審者なんですが」
「あら? それは変です。貴方はこの国の貴族身分でしょう。服装を見ればわかります。やっとそちらの国王が大使を派遣して頂いたのかと思っておりましたが――」
あのクソショタホモハゲオヤジ、まさか本当に美食と美少年に溺れる日々だったんじゃないだろうな?
そんな重大な事、一ッッ言も聞いてないんだが。
ともかくこの場は取り繕うしかない。
「あ~、確かに俺は――貴族で……大魔王殿に我が国の王から……伝言を預かっては来ているが――」
なるべく相手を怒らせないようにと慎重に言葉を選んだ結果、とぎれとぎれの説明になってしまった。
これでは不信感さらに三倍だドン‼ である。
しかし、メイドは『やはりそうでしたか!』と胸の前でぱちんと勢いよく手を合わせては笑みを浮かべる。
ついでに言えば、目の前のメイドは見た感じ、完全に人間だ。
こんな集落から遠い位置に居を構えてわざわざ使用人を募ったわけでもなかろう、つまりこの人間に見えるメイドも大魔王と同じく魔界から来た魔族なのかもしれない。
「少しお待ちくださいませ、ただいま大魔王様へ報告して参りますので」
「あ、ああ――」
そう言い残して勝手口の向こう側、台所から姿を消すメイド。
「リオン様」
リリアが袖を引っ張る。
「どうした?」
「人、といいますか何者の気配も感じないんですよ。てっきり魔物がうじゃうじゃいるかと思っていたのですが」
少しの困り顔、というかがっかり感を表に出したフクザツな表情を浮かべながらそんな事を言い出すリリア。
こいつ、大魔王の居城でも暴れるつもりだったな……。
しかし気配を感じないのは俺も同意だ。
「完全に気配を殺せるような強者ばかりかもしれないぞ?」
「はっ! さすがですリオン様。そんな風に考えた事はありませんでした――」
ごきり、と首をひねって音を出すリリアは何かのスイッチが入りかけたようだ。
いやアンタ、聖職者要素どこいったよ。
完全に今のアクションは格闘家のそれだぞ。
「お待たせいたしました、どうぞこちらへ」
そうこうしているうちに戻ってきたメイドが城内へ入るよう促すので素直に従い、すんなりと大魔王の居城内部へと入る事ができた。
ここまで友好的に接してくるのも何か裏がありそうと深読みしてしまいそうだ。
俺が心配性なだけ、であればいいのだけども。
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