クリスマスケーキ

赤城ハル

クリスマス・イヴ

 12月24日の夜。クリスマス・イヴ。

 クリぼっちしているとチャイムが鳴った。

「誰だ?」

 玄関ドアを開けると麗奈がいた。

「どうしたの?」

 今日はクリスマス・イヴだ。麗奈は彼氏とデートではないのか?

「メリークリスマス!」

 そして手に持つケーキ箱を持ち上げる麗奈。

「あ、うん。そうだね。メリークリスマス。とりあえずどうぞ」

 私は麗奈を招いた。

 キッチンでコーヒーと切り分けたケーキを持って戻ってくる。

「ホールで持ってくるなよ〜」

 4号サイズとはいえ、二人ではきついぞ。

「てか、彼氏とのクリスマスデートはどうした?」

「……彼氏とは一週間前に別れた」

 麗奈は遠い目をして答える。

「なんだそりゃあ」

 クリスマス楽しみとか言ってたくせに。

「いきなり別れを告げられたのよ〜」

「ご愁傷様で」

「……そうそう。それと誕生日おめでとう」

「昨日だし。それにそのトーンでお誕生日おめでとうなんてよく言えたわね」

 麗奈はフォークを手にしてケーキを食べる。

「もしかしてこのケーキ、予約していたやつ?」

 コンビニやスーパーのケーキは全然違う凝った作り。

「そうだよ。有名店のケーキだよ。彼氏と別れたあと、予約取り消しするの忘れた。というかあの頃だと取り消しも無理かな」

「まあまあ、苦い思い出も甘いケーキで流し込もう」

「上手いこと言ってるつもり?」

美味うまいケーキだけにね」

「ウザい」

 私は麗奈が持ってきたケーキを食べる。甘すぎるクリームが下の上で溶ける。

「ねえ、有紀って誕生日が12月23日だけど、もしかして昨日ケーキ食った?」

「食ってないよ。どうせ翌日はクリスマスだしね」

 それは子供の時からだ。

 クリスマスが翌日だからといつも私はバースデーケーキとクリスマスケーキは同じだった。

 だから祝いも一緒くたにされた。

 中にはクリスマスが私の誕生日だと勘違いするやつもいる。

「ケーキは買ってないの?」

「買い忘れた」

「なら4号でちょうど良かったわね」

「そうね。私、ケーキは好きだから5号でも良かったわよ」

「5号は大きすぎない?」

「私は誕生日とクリスマスが一緒くたにされたのにケーキは皆と同じくらいしか食べてないの。あとプレゼントもさ……」

「もしかして誕生日嫌い系?」

「嫌いではないよ。ただ、祝われるのが嫌いかな。絶対クリスマスも混ざるから」

 甘いケーキの後に苦いコーヒーを飲む。

「ま、いじられるよねー」

「そうそう」

「でも、忘れられないってことじゃん」

 祝いは呪い。

 ふとそんなことを考えた。

「でも覚えられるのも嫌だなー。毎回歳を聞かれそう。ああ、いやだ。歳は取りたくないなー」

 女は大人になると歳を取りたくないと考えてしまう。いつまで若々しく枯れずにいたいのだ。

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クリスマスケーキ 赤城ハル @akagi-haru

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