あとがき

 この物語は僕がSNSで「奇妙な話、募集します」と打ち出した時にすぐ反応があったので聞きに行った話だ。提供してくれなのは都内の大学に通う女子大生。彼女が高校生の時の話らしい。

 僕がこの話を聞いて思うことは、この橋本という男はきっと今で言う「弱者男性」、その魂なのではと言うことだ。

 今でこそ、弱者男性という言葉は知られている。だが昭和、その先の平成。自己責任の名の下に切り捨てられたの存在は、社会の波、人の流れに押し潰されてなかったことにされている。

 そんな「なかったこと」にされた男たちの「俺を見てくれ」という声が形を得たとしたら。

 西のオタクの聖地。オタクという存在が市民権を得たのは最近のことだ。それまでは鼻つまみ者だった。必然、弱い男も生まれる。その怨念が形を持ったら。その悲痛な叫びが人の姿を借りたら。

 自身の存在を、人の体を乗っ取ってまで主張する、そんな怪異が出来上がるのでは。

 では、この女子大生を助けてくれた男は何者だったか。

 男の痛みは男に分かる。

 男に同情的なのは常に、男なのである。

 男の世界は競争だ。戦いの中で敗れた存在を見て「あれは俺だったかもしれない」と思う人は多かったことだろう。

 供養。

 男が負けていった男に思うことは、墓前で手を合わせる熱心なお参り客の、その姿に重なる。


 了

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

黒い男 飯田太朗 @taroIda

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画