第10話 緊急依頼


 ギルド内で、いきなり借金を背負う形になり、これからしばらくどうやって金貨二十枚を返済すればいいのか考えていると、突然、ギルド職員たちがザワザワし始めた。


「なんだ?」

「何かあったんじゃないんですか〜?」


 そう思っていると、受付嬢がカウンター越しに叫んだ。


「緊急!緊急です!ドデベアが通過したと思われる通り道がこちらに向かっている事が確認された模様です!B級以上の方は装備を固め、周囲の警戒をお願いします! A級の皆さんは討伐隊を組み、討伐をお願いします!」


 そんな内容だった。さっきまで飲み食いしていた冒険者たちは、鎧を装備し始め、一気に殺伐とした雰囲気になる。

 僕は今日、冒険者登録をしたばかりなので、関係ないはずだった。


「社さん」


 受付嬢のリゼさんが耳元で話しかけてきた。


「は、はい」


 思わず大きな声で返事をしてしまう。


「ドデベアを討伐できれば、緊急依頼なので報酬が美味しいですよ」

「……は?」

「借金返済の、大チャンスです」


 念を押すように、再び言われた。

 だが俺は、今日冒険者登録をしたばかりの新人だ。

 そんな、Aランク級が討伐対象の魔物を倒せというのか?


「だ、だけど、俺のランクはEランクですけど……」

「大丈夫です。レイちゃんがAランクですから。ですので、頑張って討伐してくださいね」


 どうやら、レイをうまく使ってドデベアを討伐し、早く借金を返せということらしい。


「よし、行くぞ」

「はい、マスター借金を返しに!」


 俺はドデベアの情報を受付のリゼさんから聞き、魔域へキャンピングカーに乗って向かった。


「マスター、全然ドデベアがいませんね〜」

「そうだな〜」


 しばらく、ドデベアが出たと言われる場所を走行しているが、まったく見つからない。

 もしかすると森の奥へ行ったのではないか、と思ったが、ふと一つ気になることがあった。


「なあ、ドデベアって、木々を薙ぎ倒しながら移動するのか?」

「しますよ。ドデベアは、マスターが助けてくれた魔物です。あの大きな巨体で、しかも強さを示すためなのか、木々をわざと薙ぎ倒して、ただ突進するように移動します。そうですね……レイド号が通った時のような感じになりますね」

「そっか……」


 リゼさんから、ドデベアについて聞いていた。魔域からノロット王国に向かっている通り道があり、緊急依頼を出したらしいと……。

 だが、これは俺が通った通り道をドデベアの通り道と勘違いした人が、慌てて報告した感じなんじゃないだろうか?


 だとすると、緊急依頼を出して発生したお金などが請求されそうなので、黙っておくことにした。


「そういえば、なんでレイはツケが貯まってたんだ?」

「それはですね〜……恥ずかしながら、お金を払うということをその時は知らず、そのままお金を払わずに出て行っていたら『ツケでいいね』って言われて、『はい』って言ってたら、いつの間にか金貨二十枚ほど貯まってまして〜」

「アホだな」


 俺は呆れた顔で見た。


「あ、アホじゃないです!!あれは、冒険者ギルドの陰謀です。ツケって冒険者ギルドが払うってことだと思ってたんです。だから、これは冒険者ギルドの陰謀なんです。私にまとめてお金を一括で払わせるための!!」

「いや、考えすぎだな。レイが常識的な知識を持っていれば、そんなことにはならない」

「むー」


 怒ってきたが、本当のことを言われて図星だったのか、何も言い返すことができず、唸っている。


「休憩するか」

「マスター、まずいです。このままじゃ、お父様にチクられます」

「もう、それでいいんじゃないか〜。お父さん、国王なんでしょ? 金貨二十枚くらい払ってくれるんじゃないの〜」

「それはダメなんです。マスター、なんとかしてください」


 なぜか、国王から払ってもらうのは頑なに嫌がっている。

 何かあるのだろうか?

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キャンピングカーで異世界来た俺、なぜか契約者が増えて魔王討伐するルートに入ったんですが!? 〜魔王討伐とかめんどくさいので、できるだけ戦わずに済ませたいと思います〜 暁 とと @hatipati

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