第9話 冒険者ギルド


 冒険者ギルドに着く前、通貨について軽く説明を受けた。

 この世界の貨幣は大雑把に分けて、銅貨・銀貨・金貨の三種類。銅貨百枚で銀貨一枚、銀貨十枚で金貨一枚らしい。


 ざっと見た感じ、食材などは銅貨十数枚ほどで取引されているようだった。


「マスター、ここです」

「ここか~」


 そう言って中に入ると、武器を携えた者や、体中に傷を負った者たちが椅子に座り、食事をしたり依頼を探したりしている。


「おお……」

「マスター、行きますよ」


 感心していると、腕を引っ張られ、そのまま受付嬢のもとへ連れて行かれた。


「あら、レイさん。その男性は?」

「この人は私のマスターです! マスターの冒険者登録をお願いします」

「かしこまりました。では、こちらの用紙に必要事項をご記入ください」


 そう言われて渡された紙に、名前、レベル、スキルなどを記入し、受付嬢へ渡す。


「では、登録料として銀貨一枚を頂きます」

「リゼちゃん、それツケでお願い」


 ……いや、居酒屋じゃないんだから無理だろ、と思ったが


「分かりました」


 通った。

 こうして登録料をツケにし、冒険者カードを無事入手したのだが、なぜかレイは早くこの場を離れたそうに、俺の腕を引っ張る。


 その時だった。


「あの、アイリス・レイさん」

「うっ……は、はい」


 ギルドを出ようとしたところで、受付のお姉さんリゼさんに、フルネームで呼び止められ、レイは冷や汗をかいている。


「ご飯のツケが溜まっていますよね。早くお支払いするか、依頼を受けて返済してください」

「うぅ……ごめんなさい……あと一週間、待ってください……」

「分かりました。一週間です。それ以上延びたら国王様に報告しますから」

「そ、それだけは勘弁してください!!」

「では、きちんと払ってくださいね」

「はい!」


 深々と頭を下げるレイ。

 どうやらギルドでの食事代を後回しにし続け、ツケが相当溜まっているらしい。

 ……ご飯、無料だと思ってたのか?


 しかも、期限を過ぎるとレイの父親である国王に言いつけられるようで、半泣きだった。父親との関係、あまり良くないのだろうか?


「あの……レイさんのお知り合いですか?」

「い、いえ!さっき冒険者登録の時に知り合った知らない人です!」


 咄嗟に他人のフリをした。

 ……したのだが。


「ま、マスター!!違いますよね!?私とマスターの関係ですよね!?」

「ちょっ、待て、分かったから落ち着け!」


 目の前で肩を掴まれ、鼻水を垂らしながら激しく揺さぶられる。

 さすがに無視できず、関係者であることを認めると、ようやく止まった。


「へぇ……社さん、でしたよね?」

「は、はい……」


 リゼさんの無表情が怖い。

 圧が、圧が強い。


「しっかりレイさんを見ていてくださいね。もし支払いが行われなければ、社さんの冒険者登録を抹消しますよ」

「え!? いや、それは――」

「レイちゃんと契約したんですよね」

「……してます。不本意ですが……」

「では一心同体ですね。レイさんのツケ、金貨二十枚。一週間以内にお願いします」


 優しかったリゼさんはどこへ行った。俺のでは無いのに、莫大な借金を背負わされた。


「おい、俺まで払うことになったぞ!」

「一心同体です、マスター!」


 さっきまで泣いていた奴が、満面の笑みで言う。

 腹立たしかったので鼻を抓ってやった。


「いだだっ!マスター痛いです!」

「で、金貨二十枚ってどれくらいだ?」

「えーっと……給料がいい騎士団の平均年収くらいですかね~」


 ……終わった。


 多分だが、金貨一枚が日本円で十万円くらい。つまり、二百万円の借金を一週間以内。


 無理じゃね?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る