第4話 書籍化の通知

 出版の通知は、担当編集者さんとの日常会話的なやり取りの中に紛れ込んでいた。


「正式に書籍化することになりました!」


 というような内容で、このときも


「はふぇ?」


 と、実感が湧かない状況だった。


 まだ公式発表ではないので、SNSなどで読者に報告することもできない。

 自分自身が半信半疑だし、口頭で知り合いに報告するにしても、よっぽど親しい会社の同僚や、両親にしか打ち明けられない状況だった。


 しかし、そこからの作業はこれまで以上に忙しいものとなった。

 やはり本になる、ということは、出版社としてもそれなりの経費をかけて「商品」にするわけなので、これまでの「趣味での投稿」とは、その責任において根本的に違ったものになる。


 たぶん、どの出版に伴う作業においてもそうだと思うが、「校閲」という作業が入ってくる。


「校正」と「校閲」は、似たような意味合いに取られがちだが、その内容の重さはだいぶん違ってくる。


「校正」が誤字・脱字、文章の間違いなどを直すのがメインなのに対して、「校閲」では、小説全体を通した事実確認まで実施される。


 例えば、江戸時代が舞台となっているのに、そこに存在しないはずのものが登場するとおかしい。

 一例として、「ブタクサ」は明治以降に渡来した外来種なので、その記述が入っているとチェックされる。


(上記は実際に指摘されたものではないです。あくまで一例として。)


 もちろん、時系列に矛盾があったりしても指摘される。

 作品にもよるけど、一般的に書籍一冊分なら、100箇所以上は指摘点があると思う。


 それらが、2回原稿、3回原稿と積み重なることになる。

 また、これらと並行して、イラストレーターさんが表紙や扉絵、挿絵を描いてくれることになる。

 これも事前に見せてもらえるかどうか、自分の意見が採用されるかどうかは、各出版社、編集部によって違うのだろうな、とは思うけど、普通に考えて、ある程度事前には確認させてくれるようだ。


 これらの修正、確認作業を、会社員としての本業をこなしながら進めていく。

 大変だったけど、ずっとハイテンション状態が続いていたし、今考えればとても楽しく、充実していた。


 とはいえ、懸念材料もあった。

 まだ、どこからも、本になるとは、正式に発表はされていなかったのだ。


 公式には、「書籍化検討」の段階。

 だから、自分自身でもどこかで半信半疑状態が続いていた。

 そして、それが公式に発表されているのを知ったのは、意外な場所だった。


 同じ出版社から4月に発売された書籍の巻末に、7月発売として、僕の作品の出版予告が載っていたのだ!


 これを確認した時、ようやく「本になるんだ!」と実感できたし、一番興奮した。

 某巨大掲示板なんかにも、


「あの作品が書籍化されるのか!?」


 みないな書き込みがあって、それもすごく嬉しかったのを覚えている。

 Twitter (現:X)なんかでも公表していいことになって、これで「書籍化デビュー『予定』」作家となったのだった。

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