【祝い】生還

オカン🐷

第3話 生還

 子どもたちのキャッ、キャッという笑い声がした。 

 夢をみていたのやろか?

 パッと目を開けると高見沢先生の安堵の声が聞こえた。

「良かったあ、良かった」

 ほんまに際どい手術やったのやろか。

 透析患者の場合10人に1人が戻って来られないと訊いていた。

 ヤッター。

 無事生還成功。

  

 後から訊いた話では黄色靭帯骨化症の胸椎の手術を高見沢先生の先輩医師が担当し、脊柱管狭窄症の腰の手術を高見沢先生が担当、2カ所同時に内視鏡手術をした。

 その方が麻酔も1回で済む。

 まるでドラマ。

 

 病室に帰されても紺色の手術着を着せられたままだった。

 肩と脇がマジックテープになっていて慌てて着せてくれたのか、肩のテープが髪の毛と一緒に閉じられている。

 痛いけど髪の毛をちょっとずつ外していく。時間はたっぷりとある。

 付き添ってくれていた主人に寒いと言うと冷房温度を28度に切り替えた。

 それでも寒くて震えが止らない。

 看護師さんに電気毛布をかけてもらって、やっと落ち着いた。


 翌朝ヘルパーさんが身体を拭いてパジャマに着替えさせてくれた。

 毛布を剥すとスッポンポン。

 主人もバスタオルくらいかけてくれたらいいのに。

 文句が出てきたぞ。元気になったのかな。


「どおりで暑いと思いました。エアコンが28度になってました」

「あっ、主人に寒いと言ったら温度を上げてそのままでした」

 

 朝ご飯のとき強制的に身体を起されたら超痛い。

 朝ご飯はいらない。だって起きると痛いんだもん。


 お出かけするときは背中と腰の傷口に取り付けられたチューブのついた血液パックといつも一緒。

 佐々木希に似たべっぴん看護師さんに注意を促される。

「このチューブを絶対に踏まないでください」

 えー、寝てる間はわからへんよ。

 透析室に行くときも一緒。

 透明で縁取りがブルーのポシェットに入れ2個首からぶら下げて行く。

 ちょっとオシャレでしょ。どこが。

 傷口から出た血液が逆流しないように取り付けられている。

 佐々木希がひどく慌てている。

 血液パックをスケールで計って、減っていると思ったみたい。

 うちのキッチンのスケールと同じ物なので里心がつくやん。

 このパックが外され、点滴の針が抜かれとき、初めて手術が終わったような気がした。


 退院するとき、高見沢先生に「先輩の先生にもよろしくお伝えください」と言ったら、「お祝いに飲みに行きましたよ」との返事が返ってきた。

 そうや、早く帰って祝杯をあげよう。



           【了】


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