1‐1 第10話 凛と愛への魔力補給♡
◇王国暦315年1月下旬 ※1545年(天文13年)1月下旬 領都マルシオン 井伊亀之丞◇
凛と愛を伴って錬金室に戻り、イザナミ様の木像の製作を再開した。腹部、腰部からの再開になる。8頭身の美女になるようにイメージしているところで、腰のくびれをわざとらしくしすぎないように表現するため、袴の位置を高くは持ってこないようにした。代わりに脇の部分の袖にあたる身八ツ口をゆったりとした感じにすることで、女性の丸みと腰のくびれを間接的に主張するわけだ。あとは、動きのある姿勢のため、持ち上げた二の腕が絶対領域からチラリと覗くところが密かに外せないこだわりだ。
「ナオ様、なんだかとても楽しそうです」
そんな感じで調子よく錬金をつづけている俺をみた凛の感想だ。袴の部分も蝶結びをかわいく拵えて、下半身はサクサクと出来上がっていく。ああ、凛のいう通り本当に楽しいよ。
最後に足の部分。普通に足袋と草履を見せてしまってのお姿も悪くはないけれども、天上より国造りをされているという想像力を掻き立てるように、うっすらとした雲をすねの下のあたりから被せるようにしてみた。そしてそのまま雲を土台にしてしまうことで、自然な立像になった。これで完成だ。製作再開後、約1時間くらいだろうか、休憩前の1時間と合わせて、合計2時間で木像ができてしまったよ。
まだ装飾や塗装(塗装といってもプラモデルやフィギュアのそれとは違って色ではなく保護コーティングと同時に濃淡をつける)といった仕上げがある。あと大事なのは、像には俺の魔力を注入して神気を高めるため、魔力を通すミスリルを使って内部を整えるといった部分。それらはまた後ほど、月読様と宗良親王の木像を作り終えてからまとめて対応する。
今日はこれで終わりにしよう。明日は市へ買い物に行って食材など購入してから、いよいよプライベート迷宮へ繰り出す。
今日は寝る前に、凛と愛への魔力補給をしようと思う。ふたりには自力で魔力が自然回復する機能、能力は備わっていない。専ら、俺からの魔力補給によってしか、魔力をチャージすることができない。俺の魔力量は莫大なわけだが、凛と愛の最大魔力保有量は、だいたい俺の三分の一くらいある。自分のそれは化物レベルと自認しているけれども、凛と愛も相当なものだ。俺からふたりに魔力補給をするのとは逆に、ふたりから俺に魔力をチャージすることもできる。これは魔力の質を同じくする間柄による大いなる利点といえるものだ。表現としては不適切かもしれないが、緊急事態のときの魔力のストックがある、ともいえる。
「凛、愛、今日はもう終わりにするぞ。明日に備えて休もう。今夜は魔力補給をしようと思うが、今の魔力残量はどのくらいだ?」
「はい、ほとんど消費していません。90%はあると思います」
凛はそういったが、予想通りまだ十分な魔力が残っている状態らしい。戦闘とか、魔法を何度も行使したりとかがあったわけではないので、だいたい自然に消費した分でそのくらいなんだろう。いうなれば基礎代謝だけなら、およそ1日3%から5%くらいの消費で済んでしまうといったところか。
「ナオ様、私も同じです。だいたい90%くらい残っています」
愛も同じようだ。活発になにかをするのでなければ、1ヶ月弱は魔力補給なしで過ごせるのか?理論上は。しかしいつ何があってもおかしくない生活にこれからは身を置くのだ。魔力補給は早めにおこなって、常時満タンにしておくのが望ましいと思う。魔力がなくて困ることがあったら絶対に後悔するからね。
俺の魔力と同質化した相手との魔力補給のやり方は、3つある。今後おとわや、他、俺の女になる相手へまじめに説明してドン引きされるかもしれない可能性があってちょっと悲しいが、ひとつめは俺の魔力を含んだ精を、愛し合うことで直接吸収すること。これが一番強力で、効率もいい。イザナミ様の加護の影響で、そちら方面の本能的欲求がどうにも高く、国造りは人造り、すなわち子造りなんだという3段論法によって納得している。ふたつめは魔力を含んだ唾液を胃腸から吸収すること。熱い口づけを介しての方法になる。目安として、直接吸収の10分の1くらいの効率といったところか。今日はこの方法を予定しているところだ。最後のもうひとつは、手のひらから魔力を放出し、汗腺、あるいは粘膜といった他の部分から吸収させることだ。正直この方法は、方法としてあるものの非効率だ。だから、たとえば、凛の背中をさすってマッサージしてあげるついでとか、愛の肩こりをほぐすために肩もみをしてあげるついでとかそういうついでの扱いでいいと思う。
家には一応、お風呂がある。しかし手狭で3人一緒に入ることができない。地下室を勝手に作った俺だが、浴室を大きく広げることは、物理的にも普通に無理だ。地味に心へのダメージがあるな。次に家を持つ機会には、広い浴室は絶対確保しなければ、と固く決意する。そういうわけで、一人ずつ順番に入浴するのはあまりに寂しいため、それはなしだ。魔法のクリーンできれいにしよう。こういう生活魔法は便利だよ。今からのことを思うと、性活魔法だな……。
「凛、愛、さあこちらにおいで……」
ふたりを手招きする。昨日は疲れのせいで一人にて寝てしまったが、基本は凛と愛も一緒に、3人で寝る。おとわや、他の女もベッドを共にするようになったら、その機会もそのぶん減ってしまうが、魔力補給は必要であるため一緒に寝ない日でも愛し合う日は頻繁にあることとなる。今日は記念すべき、初めての日だね。
「ふたりとも、魔力補給のことは、あらためて言うまでもなくどうやるのかは分かっていると思う。だけど当分のあいだ、直接吸収は待ってほしい。効率が劣るけど口づけの方法でやるつもりだ。言うまでもなく、お前たちへの想いは不変だ。愛しく、大切に思っている」
「繰り返しでくどくなってしまうからここではこれ以上は言わないが、ふたりは大切な特別だ。だけど、俺のはじめては、姫子にと思っている……」
俺のはじめては姫子に、という恥ずかしい宣言である。おとわはまだ身体が未成熟で、俺を到底受け入れることはできない。何年かは待たないといけないが、さすがに仕方がない。俺の体が大きいせいで、イザナミ様の加護の影響だと思うけど、無理をしたらおとわが壊れてしまうだろう。
「ナオ様、私たちは大丈夫です。気遣ってくれてとてもうれしいです。ナオ様、お慕いしています」
愛のその言葉は素直にうれしい。
「私たちは、ナオ様のおそばにいることがなによりも幸せです。ナオ様は思いのままに。私たちはずっとナオ様と一緒ですよ」
凛もありがとう。愛しているよ。
………………
二人は顔を見合わせ、ふわりと柔らかく微笑んだ。まるで春の花が静かに開くような、自然な優しさでうなずく。
部屋の灯りを絞り、寝台に腰を下ろす。今宵は、俺にとっても特別な夜だった。凛と愛という存在が、ただの従者ではなく、心の支えとなっていることをあらためて感じていた。
「俺にとって、君たちは……とても、大切な存在だ」
その想いは、言葉よりも先に、ぬくもりとなって手のひらから伝わる。凛の手を取り、額に軽く口づけをした。彼女は目を細めて頬を染める。そして愛の頬にも、同じように。ふたりとも、微笑んだまま、そっと肩に寄り添ってきた。
肌と肌が触れ合うその瞬間、不思議と体温だけでなく、魔力の流れまでもが感じられるような気がした。お互いの心の奥にそっと入り込み、あたたかく包み込むような、穏やかな力のやり取り。
「ナオ様……今日は、優しい夢が見られそうです」
凛がそうささやくと、愛もそっと言葉を添える。
「私たちは、ナオ様のそばにいられるだけで幸せです。……だから、どうか安心してください」
ふたりをそっと抱き寄せ、彼女たちの柔らかな髪に指を通した。どこまでも優しい静寂が、部屋の中を満たしていく。やがて、唇がふれ合い、ゆっくりと魔力が流れ込んでいく。深く、静かに。まるで魂がつながるように。
それは、力の供給であると同時に、信頼と愛情の証だった。
夜は静かに更けていく。俺たちは、互いの鼓動とぬくもりを感じながら、眠りへと身をゆだねた。夢のなかでまた、彼女たちと再び巡り会うような、そんな気がしていた。
(あとがき)
下書きのときはもっと大胆に書いてましたが、推敲してみて興ざめしてしまいました。情事は脳内変換・想像力に委ねます。
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