汎時的(パン クロニック)なつまみ食い
たけりゅぬ
The Last Dinner PartyのFワードから思ったこと
イギリスのインディーバンド・TLDP(ザ・ラスト・ディナー・パーティー)を聴いたとき、最初は見た目にやられた。
レイチェル・ワイス似のボーカル、アビゲイル・モリスの元気なダンスが好きになった。
音も、どこかで聴いたことがあると思った。
そういえばクイーンっぽくて、ABBAっぽい。
私がベストアルバムを1000回聴いたアーティストたちだ。
そのまま安心しきって聴いていた。
そこに突然、Fワード来た。
「And I will fuck you」。
一瞬、なんだこれはと思った。
そして、
自分が聴き慣れた音をぶっ壊し、
「今、ここに彼女がいる」という感覚だけが残った。
後から考えると、あの感覚は少し変わっている。
懐かしい音でも、新しい音でもない。
昔と今が混ざった状態で、同時に鳴っていた。
時間の前後関係が、いったん消えた感じがした。
最近、何かを好きになるとき、だいたいこういう経路をたどる。
文脈をちゃんと理解したとか、歴史を踏まえたとかではない。
たまたま触れて、体が反応して、それで好きになる。
いえば直掴みだ。
映画でも、音楽でも、だいたいそうだ。
監督の代表作を知らないまま観るし、過去作を追いかけたりもしない。
それを言うと、たまに「ニワカだね」と言われる。
たしかにそうだと思う。
知っている量は少ないし、説明もできない。
「なんで好きなの?」と聞かれると言葉に詰まる。
以前、映画に蘊蓄かます先輩と一緒に一本観る前、なんでこの映画を観る気になったか聞かれた。
私は、好きなゲームでコラボしていたからと答えた。
それを聞いて、先輩は笑った。
「ニワカw」
それを私は否定しない。
実際、深くは知らないし。
ただ、その断片があったから、映画に出会うことができた。
先輩は、映画をきちんと知っている。
監督も、時代背景も、撮影技法も、ちゃんと語れる。
私はそういうのに興味が引かれない。
たぶん、私の受け取り方は「汎時的」なんだと思う。
昔のものか、今のものか、正統かどうか。
そういう区別が、最初からあまり意味を持たない。
過去も現在も、同じ棚に並んでいて、先に触れたものが先に残る。
TLDPもそうだった。
音楽史でどうとか、どんな影響関係かとか、よく分からない。
ただ、あのFワードで彼女たちと繋がれた。
それでいいと思う。
全部分からなくても、触れた瞬間に何か起きるなら。
説明できなくても、残るなら「ニワカ」でいい。
TLDPのアビゲイルは、今日もライブでくるくるとダンスをしている。
そして時折Fワードを投げて、こっちの世界に触れてくる。
「ニワカ」の私はそれを触れ返す。
それで十分だと思っている。
※The Last Dinner Party/Nothing Matters
汎時的(パン クロニック)なつまみ食い たけりゅぬ @hikirunjp
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