第3話

 ちらほら紅葉が染まり始めた秋晴れの日。家族と共にピクニックに出かけた。到底食べきれない量のシャケ料理を持って目的地に着くと、楽しそうに話す、別の家族が見える。


「やあ、プレジデント。お元気にしていましたか?」


 右の手のひらを見せながら挨拶をすると、こちらに気が付いたようだ。

 広げていたかわいい星柄のブランケットをたたみ、にこやかな表情を見せてくれた。


「あの、交渉の日を思い出しますね」


 プレジデントの反応に思わず嬉しくなる。私たちの話し合いが始まったあの日の挨拶を覚えていてくれたのだ。「どうぞ」と促されるままにお邪魔して、家内が腕を振るった鮭料理を差し出しす。


「どうですか、どれもおいしいでしょう?家内はねえ、料理が得意なんですよ」


「いやあ。本当においしいですね。息子も手が止まらないみたいです」


 私の息子も、彼の息子も、マナーなんか気にせずに、むしゃむしゃとがっついている。


 微笑ましいこの時間が、空間が、あまりにも幸せだった。


「プレジデント。よければ家族一緒に写真を撮りませんか?」


「いいですね。写真撮る時の掛け声も知っていますよ」


 さすがだ。

 さすが私の友人。


 知識だけでなく、私たちの文化もよく知ってくれている。だからこそ力なりたいと思えるのだ。


 ――家族のために罪悪感を殺そう。

 

 最良の友人に、心の中で拍手をしながら、タイマーをセットして、駆け足で戻る。


「それじゃみんないくよー!」

「「はい、チーズ!」」


 その日の晩。私は一枚の画像と、思いを綴った文を投稿した。



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 くまさん家族とピクニック

 まさに秋晴れといった空気が心地いい


 にこやかな彼らと囲むあたたかな関係は

 きっといつまでも続くのでしょう


 おだやかな時間


 続けばいいな

 健全で幸せなこの時間が


 老人になっても 老熊になっても


 

 ♯拡散希望

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プレジデント・ベア わたねべ @watanebe

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