卵まごまご

@my4136

第1話

ある日、今時漫画かアニメの中でしか見ないような<ひろってください>と書かれた段ボールを見つけた。駅までの知る人ぞ知る近道、毎日通る道ではないので、いつ置かれたのかわからない。中には犬も猫もその他のペットも居なくて、卵。昔見たことがあるダチョウの卵大。ただし、紫と黒のゼブラ柄・・・。誰かのいたずらだろう、明らかに怪しい。見なかったかとにして、通り過ぎる。


数日後、すっかり卵の事を忘れていたので、うっかり近道を通ってしまった。段ボールはそのまま。ただ、<ひろってください>の下に<そこのおねえさん>・・・。周囲を見渡すけれど、他に人は居ない・・・。ダッシュで通り過ぎる。


また数日後、近道を通らないと電車に乗り遅れてしまうので、仕方なく通る。段ボールの側には、エサをくれるおばさんにしかデレないと噂の地域猫のリリちゃん(オス)がいて、ニャアニャア何か話している・・・。遠巻きにして通り過ぎる。卵のせいで、早起きが身についてしまった。


休みの日、近道を通り過ぎた先にある図書館へ行こうと思い立つ。さすがにもう無いだろうという考えは甘かった。視線を合わせないように・・・そう・・・視線。右ほほに突き刺さるように視線を感じる。足を速める。

しかし、今時の日本で、段ボールがそれも変な卵が入った段ボールが、それも住宅地の中の道路に置きっぱなしなんて事があるだろうか?


図書館からの帰り道、私の前を歩いていた男子学生の集団の一人が段ボールを蹴った。確かに蹴ったのだけれど、何事も無かったように、実際何事も無く通り過ぎて行った・・・。私は遠回りして帰った。夢にまで卵が出てくるようになってしまった。


最初に見つけてから一ヶ月以上、私は安眠のために直接対話を試みることにした。

「ねぇ、あんた何?」

「・・・・・・・」

「ひろってください、そこのおねえさん、いいことあるよ・・・、良いことって何よ」

「・・・・・・・」

「分かった。拾ってやるわよ。女は度胸だよ」

雨ざらし風ざらしに一ヶ月以上なっていたのに、全くよれていない段ボールを持ち上げる。何だか、卵が嬉しそうにしているような気がした。


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