第26話
暑さが、ようやく終わりを告げようとしていた頃だった。
一年の頃から付き合いのある、莉嘉と部活終わりに話していたとき、ふと、ひとつの疑問が頭をよぎった。
――瑠璃は、どこの大学に行くんだろう。
最近、机に向かっている姿をほとんど見ていない。
でも、それが逆に答えだった。
指定校で、もう決まっている。そういう雰囲気は、前から感じていた。
問題は、大学名だった。
知りたい。
その気持ちは、あの罰ゲームの存在を一瞬、忘れさせるほど強かった。
けれど、瑠璃の名前を呼ぼうとした瞬間、体が言うことをきかなくなった。
忘れたつもりでも、体は覚えていた。
罰ゲームは、まだ終わっていなかった。
本当は、瑠璃の口から聞きたかった。
声が聞きたかっただけなのかもしれない。
あるいは、運が良ければ、少しだけでも関係を戻せたかもしれない。
でも、そのすべてを、罰ゲームが遮ってくる。
どこまでも、あいつは俺と瑠璃の間に溝を突きつけてくる。
仕方なく、莉嘉に聞いた。
瑠璃は、英語系の学科に行きたいと言っていた。
国際に強い大学だろう、という予想はついていた。
ただ、正直なところ、飛び抜けて頭がいいタイプには見えなかったし、得意科目があるようにも思えなかった。
だから、桜美林とか、帝京とか、そんな名前を勝手に思い浮かべていた。
けれど、指定校でわざわざFランを選ぶほど、さらは甘くない。
日東駒専あたりだろう。
そう思っていた。
答えは、神大だった。
――普通だな、と思った。
国際系も強い。条件は、揃っている。
でも、「神大か」とも思った。
もし、運が良ければ。
同じ大学に行けたら。
そんなことも、頭をよぎった。
けれど、俺は日本史を学びたかった。
神大は、日本史が強いわけじゃない。
ここで初めて、道が分かれた気がした。
前に、瑠璃が言っていた言葉を思い出す。
教職に興味がある、と。
でも同時に、工場で働くのも悪くない、とも言っていた。
俺は、教壇に立ちたい。
向上心だけは、瑠璃よりあるつもりだ。
今は、ただ祈るしかなかった。
キスがしたいとか、抱きしめたいとか、
そんな感情は、全部、胸の奥に押し込んで。
ただ、望みが叶うことを祈るだけだった。
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