第24話

沈黙は、喧嘩だけが理由じゃなかった。

むしろ、それよりもくだらなくて、逃げ場のない理由だった。


由美の件で苛立っていた夜、

男友達と集まって、笑いながら決めた罰ゲーム。


最初は軽かった。

「話しかけたら募金千円」

ふざけてるし、すぐ終わると思ってた。


次はエスカレートした。

「三学年の前で一発ギャグ」

笑ってごまかせると思った。


でも、最後は冗談じゃ済まなかった。

「全学年・全クラスの前で一発ギャグ」


誰かと話すたびに、

彼女と目が合うたびに、

その罰が頭をよぎる。


——話したい。

——でも、話せない。


勇気がないわけじゃない。

想いがないわけでもない。

ただ、踏み出した瞬間に、

すべてを失う未来が見えてしまっただけだ。


だから俺は、

言葉を選ばなかったんじゃない。

言葉そのものを失った。

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