第22話

 なんで、そっちにつくんだよ。


 それが、最初に浮かんだ感情だった。


 俺は、相談に乗ってきた。

 グループのことも、友達関係のことも、男友達との揉め事も。

 言葉がきついだけで、悪い奴じゃないって、必死にフォローもした。


 由美のことだってそうだ。

 関係がこじれた経緯も、俺は聞いてた。


 なのに。


「なんであんなことしたの?」


 その一言で、全部ひっくり返った気がした。


 俺は、正義感で動いたつもりだった。

 うるさかったのも事実だし、笑って流されるのが一番ムカついた。


 でも、説明する前に、裁かれた。


 頭の中で、何度も同じ問いが回る。


 ――俺は、味方じゃなかったのか?

 ――俺がしてきたことは、全部無視なのか?


 怒りだった。

 でも、それ以上に、虚しかった。


 距離ができたのは、その日からだった。


 話さなくなった。

 目も合わなくなった。


 それでも、廊下ですれ違うたび、

 彼女の存在だけが、やけに大きく感じられた。

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