第15話
男友達と、俺と、瑠璃。
三人で遊んだことがあった。
瑠璃を待っている間、
どんな格好で来るんだろうって、
ずっと考えていた。
似合いそうな服も、
たぶん選ばないだろう服も、
勝手に頭の中で並べていた。
改札の向こうに人影が見えて、
それが近づいてきて、
顔がはっきり見えた瞬間。
天使が来た、
本気でそう思った。
俺の好みとか、
そういうのを全部抜きにしても、
完璧だった。
狙ってないのに、
刺さる。
頑張ってないのに、
目を離せない。
言葉が出なかった。
出したら、
全部ばれそうで。
だから、
一言だけ言った。
「かわいい」
たったの一言自分の中で、達成感が感じたが、当たり前のことを言っただけだったのである。
映画を観て、
カラオケに行って、
そのあと外でだらだら話した。
その日、
俺はずっとサラを見ていた。
気づいたら、
視線が自然と追っていた。
なんで男友達がいるんだろう、
って、何度も思った。
二人きりで歩きたかった。
映画も、カラオケも、
全部。
肩に触れたかった。
抱きしめたかった。
キスを、してみたかった。
プリクラも、
二人きりがよかった。
カラオケで、
瑠璃が歌った。
声が、思っていたよりずっときれいだった。
俺は歌うのが得意じゃないから、
ふざけてごまかした。
笑いを取りにいったはずなのに、
気づけば、
彼女の声に聞き入っていた。
視線は、
目に行って、
口元に行って、
すぐに逸らした。
見てはいけない気がして、
でも、見てしまって。
何もしていない。
何も起きていない。
それなのに、
胸の奥だけが、
ずっと騒がしかった。
不思議だったのは、
いつも俺の隣にいるのが、
男友達だったことだ。
歩くときも、
座るときも、
自然とそうなっていた。
あいつは、
なぜか俺と女子を離す。
意図しているのかどうかは、
わからない。
話題は、進路のことになった。
「高校の教職取りたいなら、
一般じゃない?」
それを言ったのは、俺だった。
瑠璃は少し考えてから、
「一般は無理かな」
そう言った。
「指定校が無理だったら、
総合型行くと思う」
淡々とした声だった。
俺は、
それ以上何も言えなかった。
同じ夢を口にしたはずなのに、
選ぶ道は、
最初から違っていた。
その日は楽しかった。
映画も、カラオケも、
外で話した時間も。
それでも帰り道、
胸の奥に、
小さなずれが残っていた。
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