第12話
大学の探検、という学校行事があった。
進路を考えるための、ただのイベント。
興味があるふりをして、
実際は誰と行動するかのほうが大事だった。
偶然、
彼と同じコースだった。
バスも一緒。
私は少しだけ迷ってから、
「隣、いい?」と声をかけた。
彼は一瞬驚いた顔をして、
すぐに「いいよ」と言った。
席に座ると、
バスはゆっくり動き出す。
車内はざわざわしていて、
外の景色も流れていく。
「Netflixみよ」
気づいたら、そう言っていた。
同じ画面を覗き込む。
イヤホンは使わない。
音は小さくして、
肩が触れるか触れないかの距離。
内容は正直、
あまり覚えていない。
笑ったところも、
ストーリーも。
覚えているのは、
彼が時々こっちを見て、
何か言いかけて、
やめる、その間。
私は、
その沈黙が嫌じゃなかった。
怖い人だと思っていた。
でも今は、
隣にいるのが自然だった。
ただの行事。
ただのバス移動。
ただの動画。
それなのに、
この時間が終わらなければいいと、
ほんの少しだけ思ってしまった。
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