第9話

夜になると、スマホが光る。

「ツムツムやる?」

それだけの一言で、今日が少しだけ延びる。


意味もなくハートを送り合って、

点数を競って、

負けたら理不尽な言い訳をして。

画面越しなのに、距離はやけに近かった。


別の日は、男友達も混ざって

バトルロワイヤルをやった。

真面目に作戦を立てるやつ、

すぐ突っ込んで死ぬやつ、

その全部がどうでもよくなるくらい、

彼女は笑っていた。


俺の話は、だいたい下ネタだった。

品がないし、くだらないし、

あとから思えば自分でも引く。

でも、その考え方が面白いらしい。

彼女は腹を抱えて笑った。


女子で、

こんなふうに下ネタで笑う人はいなかった。

笑ってくれるから、

もっと話したくなった。

もっと反応が見たくなった。


それが何なのか、

名前をつけるのは怖かった。

だから、日常の中に押し込めた。


ゲームをして、

笑って、

夜が終わる。


ただそれだけなのに、

次の日が来るのが、

少しだけ楽しみになっていた。

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