第7話

それからは、

特別なことは何もなかった。


LINEで、

ツムツムを一緒にやった。


夜中に通知が来て、

気づいたら点数を競っていて、

どうでもいいスタンプを送り合った。


バトルロワイヤルのゲームも、

男友達を交えて一緒にやった。


画面の中では、

彼は相変わらず無口で、

でも必要なときだけ、

的確な指示を出した。


それが妙に頼もしくて、

少し笑えた。


一番おかしかったのは、

彼の話。


内容はほとんど、

どうしようもない下ネタだった。


でも、

ただ下品なだけじゃなかった。


考え方がずれていて、

視点が変で、

言い切り方が変に真面目で。


私は、

久しぶりに、

何も考えずに笑った。


女子同士で、

こんなふうに下ネタで笑ったことはなかった。


笑っていいのか、

引かれないか、

どこかで気にしていたから。


でも彼は、

私が笑っても、

何も言わなかった。


「引かないんだ」


それが、

少し嬉しかった。


気づいたら、

その時間が、

一日の中で一番楽になっていた。


その頃にはもう、

私は分かっていた。


あの人は、

怖い人じゃない。


むしろ、

私の前では、

少しだけ無防備だった。




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