第3話


瑠璃は、放課後になると僕のところに来た。

決まって、誰もいなくなる少し前の時間。

「ねえさ、友達のことでさ」

その言い出し方も、もう慣れていた。

僕はうなずいて、続きを待つ。

「今のグループ、正直しんどいんだよね」

「全部否定から入ってくるし」

「弁当大きくない?とか、平気で言うし」

笑いながら言うけど、

その笑いが無理しているのは、すぐ分かった。

僕は、知っていた。

さらが、そのグループの中で

いつも一歩引いた場所に立っていること。

でも、あえて言わなかった。

彼女が気づいていることを、

他人が言葉にするのは、時々、残酷だから。

「そんなに辛いならさ」

「一回、離れてみるのもありじゃない?」

三年の最初だった。

何かを変えるには、

ぎりぎり許される時期だった。

彼女は少し考えてから、

「そうだよね」って言った。

それだけで、

僕は少し救われた気がした。

「他の人とも話してみる」

「合いそうな人、探してみる」

うまくいくかどうかは分からなかったけど、

頑張ろうとしていることは伝わってきた。

「無理しなくていいからね」

「何かあったら、すぐ言って」

それは建前じゃなかった。

僕は、本気でそう思っていた。

「俺たち、友達だし」

その言葉を言ったとき、

少しだけ、胸が痛んだ。

彼女は、そのとき、

僕のことをどう見ていたんだろう。

それを知るのは、

もう少し先の話になる。

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