第三章 寄せ集めの論理——なぜこの七人なのか
■流動的だったメンバー
七福神の構成は、実は江戸時代まで流動的だった。
福禄寿と寿老人が同一神とされることが多かったため、「七人目」の枠には様々な神が入れ替わり立ち替わり当てられた。候補として挙がったのは——
稀荷神。五穀豊穣の神。狐を眷属とする。
お多福。福を招く女性の象徴。
福助。江戸時代に流行した福を招く人形。
また、宇賀神、達磨、鍾馗、不動明王、愛染明王なども七福神に数えられたことがある。
このメンバーの流動性は、七福神が「公式」のない民間信仰であることを如実に示している。誰かが正統な構成を定めたわけではなく、人々が「福」を感じる神を自由に集めていたのだ。
■「福」の百貨店
現在の七福神の構成を見ると、それぞれが異なる種類の「福」を担当していることがわかる。
恵比寿は商売繁盛と大漁。大黒天は五穀豊穣と財福。弁財天は芸能上達、知恵、財運。毘沙門天は武運長久と厄除け。布袋は家庭円満と子宝。福禄寿は幸福、俸禄(出世)、長寿。寿老人は長寿と健康。
商売、農業、芸事、戦、家庭、出世、健康——人間が望むあらゆる「福」が網羅されている。七福神は、福の「百貨店」なのだ。
このキャスティングの妙が、七福神が広く受け入れられた理由だろう。どんな願いを持つ人でも、七福神の誰かに祈ることができる。
■インド・中国・日本——混成の妙
七福神のもう一つの特徴は、インド・中国・日本という三つの文化圏の神々が混在していることだ。
ヒンドゥー教の神(大黒天、毘沙門天、弁財天)、道教の神(福禄寿、寿老人)、中国の禅僧(布袋)、日本の土着神(恵比寿)。これほど出自の異なる神々が一つの船に乗っている例は、世界の宗教史でも珍しい。
しかし、これは日本の宗教文化の典型でもある。神仏習合——神道と仏教の融合——を当然のこととして受け入れてきた日本人にとって、出自の違いは問題にならなかった。「福をもたらす」という一点で、すべての神々は等価なのだ。
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