満開の恋花

雪花side


今日の0時に私の命は尽きる。

最後に陽向に残せるもの、あるかな

私は考えに考えこんな話を思い出した

「花咲病の花は主のもっとも強い意志を表して咲き誇る」

それなら―この水仙は恋花だ


ああ、もっと陽向といたかったな、


冬の病室に、時計の針が0時を刻む音が静かに響く。

胸の奥で、水仙のつぼみが限界まで膨らみ、痛みが全身を駆け抜ける。

でも恐怖はない。むしろ、胸の中は陽向への愛で満ちていた。


「陽向……」

小さく震える声に、微かな笑みを添える。

「この水仙は私たちの恋花だね」

最後の力を振り絞り、手を握る陽向の手の温もりを胸いっぱいに感じた。


初日の出は見られない。

でもいい。心の中で、あの一年前の光景は永遠に輝いている。

0時ちょうど、胸の水仙が静かに咲き、私は溶けるように世界から解き放たれた。


陽向side


「雪花……いやだ……! お願い、まだ……」

手を握り返す力もなく、声が嗚咽に変わる。

「なんで……なんで黙ってたんだ……! 俺に……教えてくれたら……」

涙で視界が滲み、胸の奥の痛みが言葉に変わらない。


「こんなに……好きなのに……どうして……」

声が震え、手の中の雪花はもう冷たい。

「離さない……離さないから……!」

叫んでも、体はもう応えてくれない。


手の中に残る温もりだけを必死で抱き締める。

「雪花……俺が守るって……約束したのに……」

嗚咽が続く。怒りと後悔、愛しさが交錯し、心が壊れそうになる。


でも、胸に咲いた水仙だけは、永遠に光を放っている。

――雪花が最後に咲かせた、二人だけの恋花。


陽向はただ、その美しさに抱かれ、泣き続けた。

世界は新年を迎え、冬の光が差し込む。

けれど、俺の隣にはもう、雪花はいない。


そのあとになって俺は知った

水仙の花言葉は――もう一度愛してほしい



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最後の恋花 夏宵 澪   @luminous_light

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