「最高神の息子」を名乗る。
そんな嘘から始まった物語なのに、読み終えたときに残るのは、嘘そのものよりも、その嘘を抱えて生きてしまった少年が、どうやって自分の名前で立つのかということでした。
クロウは、品行方正な主人公ではありません。
お金は好きだし、逃げるし、見栄も張るし、どうしようもなく俗っぽい。
けれど、その俗っぽさを失わないまま、誰かを傷つけたことを悔いて、正しくありたいと願うところが、心に残りました。
神々もまた、ただ遠く美しいだけの存在ではありません。
圧倒的な力を持ちながら、悔い、怒り、愛し、誰かを守ろうとする。
神話の大きさと、人の泥臭さが同じ場所にあるのが、この作品の魅力だと思います。
脇にいる人物たちもそれぞれ濃く、好き嫌いだけでは片づけられない吸引力があります。誰もが持っている表と裏の心理。それがとても色濃く出ていると思います。
本編とは違う重さのある外伝です。
でも、ただ重いだけではなく、金と嘘と祈りの淵から、それでも前へ歩いていく光がありました。
読み終えたあと、タイトルの意味が少し変わって見える物語です。
「神々の街で、吐く男」というタイトルが全てを語っています。神気に拒絶される半人半神のクロウが、華やかな黄昏都で文字通り吐きながら生きる第1話の導入は、夜姫の甘く切ない恋愛譚とは全く異なる温度で始まります。
この作品の強みは、同じ世界の「裏側」を徹底的にダークに描く覚悟にあります。灰溜地区、絶祈圏、純神派のテロ、均衡院の腐敗——夜姫が守る光の世界の足元で、こんな泥沼が広がっていたのかという衝撃。本編を読んだ読者ほど、この落差が痛い。
リズとの出会いも絶妙です。お互い吐きながら出会うという最低の状況が、後の関係性の基盤になっている。「外伝」と謙遜しながら、第1回エンターブレイン単行本ファンタジー長編コンテスト応募作として堂々と立っているのも納得の骨太さです。「革命は理念ではない。設計だ」という一言に、この物語のすべてが詰まっています。
本作は、「外伝」と、うたわれているとおり、本編に登場する主要な神々がまた違った役割や「人の側から見た姿」として描かれているようです。
かくいう、私は外伝から読み始めてしまいました。
しかし。しかし、おもしろい。
神にもなれず、人としても居場所がない半人半神の青年・黒羽(クロウ)が、金のために最高神「天照」の息子を名乗るところから動き出す物語。
構成としては、痛みに満ちたドラマ、そこから生まれる成長を丁寧に壮大に描く筆力は脱帽いたします。
WEB小説のトレンドに対するアンチテーゼとして、そして、目の肥えたライトノベル読者へ向けて、どこまでも高い完成度へと練り上げた一作。
ぜひ、おすすめいたします。
この物語は、人でもなく神にもなれない、半人半神の血筋を生きる青年クロウのお話です。生きるために泥水をなめるような生活の中で、彼が信じる物は金と人より頑丈な体。
神が住む都に憧れ、憎み、自分の血筋を呪いながら、戦利品を売りさばき生きる糧にする。それが今のクロウです。
彼の言動や立ち振る舞いに、読み手は共感と言うより、同じ痛みを体感してしまう。
それはクロウの感情描写が、優れているからとしか言い様がありません。
やがて、クロウの純粋さに心を打たれる場面にも出会うでしょう。
クロウの住む世界と、神が暮す美しい世界の対比が、いっそう物語を深い物にしています。与えられた運命を何に使い、どう生きるのか。
青年クロウの成長と生きざまを、是非、皆様の目で確かめて頂きたい。
おすすめの作品です。
灰溜地区で生きる半人半神の青年・黒羽。
神にもなれず、人としても居場所を持てない“半端者”。けれど彼が金のために「最高神・天照の息子」を名乗ったことから、物語は大きく動き出します。
“裁くための神”を欲する純神派が、半人半神を標的にし、「神は来ない」という思想を街に刻んでいく。
その不気味で歪んだ信仰が、この作品に濃密なダークファンタジーの空気を生み出しています。
けれどその奥には、悲しき神話の中に今も残る、ある神の怒りや悲しみ、そして愛があります。
それが少しずつ明かされるたび、ただ暗いだけではない、この物語の奥行きを感じました。
本編に登場する主要な神々が、外伝ではまた違った役割で現れ、人の側から見た神々の姿が描かれることで、本編とは異なる輪郭が浮かび上がるのも魅力です。
闇の色が濃い物語でありながら、その根底に流れる光や作者様の思いは本編と地続きで、あわせて読むことで世界のスケールや重厚さ、緻密な思想設計により深く触れられます。
そして何より、「金儲け」と「生き延びること」だけを大切にしてきた黒羽が、この世界の歪みの中で何を選び、どう変わっていくのかも、この物語の見どころです!ぜひ本編を読んでいない方も!
神の住む天界。
それは人間が住む世界と酷似した地獄だった。
いや、逆でこの地の『 写し世 』が人間界なのかも知れません。
半分人間の人を信じることすらできない境遇で育った青年が、盗賊まがいの転売屋をして、その日の糧を得て命をつないでいるところから始まります。
やがて、その底辺でしのぎを削り生きている少し年上の女性と出会うところで、大きく運命が変わっていきます。
運命だけでなく、彼の性格や対人への思いや接し方も変わり、この世界のルールに揺り動かされながらも、自身に降りかかる運命に立ち向かって行く。
今60話まで描かれていますが、ここからクライマックスへ向かって行きます!
圧倒的な表現力と、人物たちの仕草や心情描写は凄まじいものがあり、
物語の構成力は、そのままアニメにできるんじゃないの?くらい、よく練り上げられております。
ぜひ皆さんにも見て欲しい作品です。
転売屋を生業にしていた、クロウ。
だが、彼は一生に一度しか使えない転売を行う事で、転売屋としての未来を失う。
大金を得るが、とても一生暮らしている額のお金ではない。
食べていく為には、今後も職が必要だ。
しかし転売屋としてのコネやスキルしかないクロウには、その職が中々見つからない。
そんな時、艶香という女性が、奇妙な依頼をしてくる。
最高神の息子を名乗り、その噂を広めろと言うのだ。
最高神の名を騙る事を求められたクロウは、自身の身の安全とお金の為に、その依頼を受けた。
そして動き始めたのは〝純神派〟を名乗る、テロリスト。
己の主張を通す為なら、拉致監禁さえも厭わない彼等の最終目標とは?
その時、最高神は?
クロウは何を思い、どう動く?
今、独創性に満ち溢れたこの世界観が――読者の心を掴む。
(20話読了時点です)
外伝と侮っていた。
――この作品は、本編とは別の“地獄”を描いてくる。
色彩豊かで、荘厳ながら笑い声に包まれる、本編と一転して、
本作はダークな開幕から読者を引きずり込む。
主人公・半人半神のクロウの視点から描かれるのは、
黄昏都に住まう神々との、埋めようのない断絶。
常降西・灰溜地区。
闇市と娼館がひしめく、人の底。
常降北部・翠嶺。
街を見下ろす高台の特権階級。
そして祈壇区。
地名だけで、階層と分断が伝わってくる。
本来、神気はどこにでも満ちているはずのこの世界に、
それでもなお存在する――絶祈圏。
祈りの届かぬ場所。
そこで現れるのが、”純神派”。
神を信じるのではなく、裁くための神を欲する者たち。
思想はやがて、形を持ち、暴力になる。
――そして迎える、第19話。
神・炎武と、半神の少女。
純神派の仕掛けた残酷な舞台の中で、光がすべてを塗り潰す。
……そこに残るのは、救いではない。
神と人。
その温度差を、容赦なく突きつけられる。
だが、この物語はただ重いだけではない。
静謐さと儚さが、ずるいくらいに同居している。
だからこそ、目が離せない。
こんな世界に夜姫ちゃんが――想像するだけで、恐ろしい。
今思えば、本編のプロローグの”あれ”は……。
助けてください、天照様。
笑わせてくれ、須佐男。
祈りの届かない場所が、ここにある。
その先で、私たちは何を目にするのか。
本編と並んで、素晴らしい一作です。
どちらからでも、読んでみて。
冒頭の神殿街から独特の世界観に引き込まれる物語を読みながら、すぐに壮大なスケールを感じ取りました。
あいにく本編を拝読せずに入ったため、すでに損をしているのかもしれませんが、それでも物語の深み、厚み、そして読みやすさと、秀逸な読み物としての条件を完璧に備え持つ作品。
完成度が高いのはもちろんのこと、ほど良い緊張感が漂う演出や、物語のつなぎ方など、卓越した技術を全面から感じ取れます。
半人半神という立場だからこそ振る舞える動きや判断、そしてなかなか解消しない葛藤や胸のうちなど、さまざまな角度から光を当てて読むことができる多彩さがあります。
まるで全身の筋肉をまんべんなく使っているかのような幅広い視野による展開の配置。
読みながら思索に耽りたくなる思慮深さもあり、先行きが気にならずにはいられない神話譚です。
神々や人との交流を通じ天照との愛を深め成長していく本編「夜姫 常世神話譚」。
本作はその外伝であり半神半人の主人公クロウの視点で、
舞台である「常世」の世界と関わる人々が掘り下げられています。
夜姫は甘く切ない恋愛が秀逸で、彼女の魅力に取り込まれる作品であることに対し、
本作は同じ世界と人物を共有した執着や欲望の渦巻くダークファンタジー。
その見事な乖離は単独で楽しめる別作として昇華されています。
常降に住む人々の息遣いが感じられるような、
読み応えのある生き汚さを、畳み掛ける文章で描かれるスタイルは圧巻です。
夜姫を読んだ方が多少楽しめますが、読んでいなくとも問題ありません。
逆にこちらを読みつつ合わせることで、心が浄化されるかも?
独自の世界を書き上げる手法に、尊敬いたします。