第40話 シノギは続く
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「若、連戦で悪いですが、アルバイトです」
千葉の廃工場にホンダCRF250Lに乗って、向かうと、組員の坂東に開口一番、そう言われた。
そして、バラクラバを顔に付ける。
「講義が暇すぎて、しょうがない。バイトしないとやっていられない」
「しっかり、遊んで、しっかり、稼いでくださいね? 彼女の為にも?」
坂東がそう軽口を叩くが、社長代理の柴田は真剣な表情だった。
「今回はやばい案件ですよ?」
「額は高いんだろう?」
「一人で一〇〇〇万円を超える額ですね? この意味は分かります?」
結鶴はニタリと笑う。
久々に難易度の高い、シノギじゃないか?
「政府要人だな?」
「依頼主は野党民人党の参院議員、小石川です」
「高田経済安全保障大臣のスキャンダルを堂々と公表したのは良いが、その後の追及が攻め手を欠いて、民人党は高田のスキャンダルを追う事に執着。本来の政権の独裁的な法解釈の変更を正すという、視点を忘れて、結果的には高田は今も大臣を続けている。さらには小石川自身も失言が相次いで、大恥をかいて、一時期は自殺する可能性もあると言われるくらいに憔悴しきっていたらしいな?」
「上客やけど、人間として腐った奴ですよ。自分が仕掛けた喧嘩で相手を追い詰めたけど、結果論として議員辞職には追い込めなかったからと言って、殺すという暴挙に出るんっすから? もはや、テロリストです」
「そんなものだよ。日本の政治家なんて? それを選ぶ、日本の民意も高が知れている」
結鶴と柴田はそう言うと、工場の中心部へ向かう。
そこには眼鏡をかけた、小太りの男が一人で立っていた。
「先生は来ないんですか?」
どうやら、秘書のようだ。
「先生は現在、多忙の為ーー」
「自殺するんじゃないかと憔悴しきった人間に激務はこなせませんよ。人一人を自分で殺す度胸も無いくせに実行犯たる、俺らにも仁義を通さない。あんたらの先生は人間のクズで腐っていますね、ウ●コの匂いがする」
「・・・・・・先生のご意向が強いので、あなたたちにお願いせざるを得ないのです」
「・・・・・・誰を殺せばいいんですか? えぇ?」
柴田が意地の悪い、笑みを浮かべる。
「・・・・・・高田を・・・・・・高田佐紀という名のゴミ女を殺していただきたい!」
秘書は憤怒に体を震わせながら、そう叫ぶ。
「先生は腐ってなどいない! 腐っているのは自明党政権だ! あの女は先生をノイローゼにしてしまった! この報いは死を持って、償ってもらう!」
「御託は結構です。分かっていると、思いますが、政府要人を殺すいう事はそれなりのリスクを背負うから、命の値段は高くなりますよ?」
「いくらだ?」
「一〇〇〇万円が妥当。払える?」
それを聞いた、秘書は「望むところだ! 私たちの正義を踏みにじったあの糞女に裁きの鉄槌を下す! 金など、いくらでも払う!」と叫び出した。
歪んだ正義だ。
だから、政治家なんか嫌いなんだ。
人間として浅いくせにもてはやされて、派閥の力を借りて、昇進だけは続ける。
要するに大半の埋もれる政治家はお調子者のパリピの集団に過ぎない。
存分に金をふんだくり、このシノギを申し込んだことの事実で永遠にゆすり続ける。
極道を甘く見た、ツケをお調子者の政治家に払わせてやる。
「交渉成立でいいですね?」
「あぁ、頼む。あの女を・・・・・・高田佐紀経済安全保障大臣を暗殺してもらいたい!」
秘書は笑っていた。
歪んだ正義感から来る、狂気と腐敗と崩れ去った慢心から来る、鬼畜の表情だ。
ベイカー・・・・・・
今度は普通に映画でも観ようか?
ふと、結鶴はそう思った。
人間は死地に挑むときに愛する人を思い浮かべるのだろうかとも思えた。
今度のシノギは本当に捕まるかもしれない。
終わり。
極道の結鶴~気になるあの子は極道の御曹司~ 日比野晋作 @2009269
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