第39話 休息
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その後の世論の流れとしては警察庁刑事局の偉い人の自殺と渋谷署と原宿署の警察官の自殺が報じられたが、それは仕事に疲れた警察官の突発的な自殺で処理された。
六本木での結鶴たちが起こした、襲撃事件は結鶴以外の真木組の面々の自首とMI6の支援もあってか、監視カメラの映像を使った、捜査も難航し、首都高における、結鶴が起こした騒動もガスを積んだトラックの爆破で片付けられた。
一部のSNSでは映像が拡散したそうだが、それも全て消去され、結果論として、世論を喚起させることは無かった。
話には聞いていたが、国家公安委員長と父の所属するMI6が裏で暗躍するだけでここまで、規模が大きいとは言え、一暴力団のやりたい放題を許せるのだろうかと、鈴は辟易したが、結果論として真木、宮崎、大園が自首したという禊を受けて、真木組は存続。
結鶴は逮捕されなくて済んだ。
しかし、考えてみれば、同時期にキャリアとノンキャリアで違いはあれど、同時期に警察官が三人も自殺というタイミングの良さはどうにもおかしかった。
案外、この三名の警察官が黒陽会の内通者となっていても合点がいくとも思えるが、それを結鶴に確認する勇気は鈴には無かった。
「結鶴君・・・・・・」
「何だ?」
「何で、初デートが鎌倉なの?」
一連の事件も過ぎ去り、平穏を取り戻した、結鶴と鈴は鎌倉駅を降りた後に小町通りを歩きながら、鈴はそう言った。
「・・・・・・よく分からないで決めた」
「映画とかで良いじゃん? マジでコミ症だよね? 結鶴君は女の子と付き合った事、無いでしょう?」
「無いな? 俺には友達がいないからな? そういうベイカーは?」
「答えたくないなぁ・・・・・・結鶴君が想像できない数は付き合ったよ」
それを聞いた、結鶴は「そうか、武闘派だな?」とだけ言った。
「言い方! それ言うと、私が奔放な人に思われるから!」
「じゃあ、百戦錬磨」
「同じだろう!」
そう言いながら、二人で歩き、鎌倉コロッケのチョコレートコロッケを買うと、そのまま八幡宮へと向かって行った。
「トンビが飛んでいるから気を付けろよ。かっさらうからな?」
「・・・・・・」
「何だ?」
結鶴がコロッケにかぶりつく。
「そんなに遊べなくなるね?」
「あぁ、アメリカに行くんだろう?」
鈴はアメリカに留学することが決まったのだ。
今年の九月からという急な日程で、それ以降は結鶴に会うどころか、しばらくは日本の地を踏むことは無い。
事務所にも了解を取っての事だが、黒陽会会長の藤宮が決めた措置だ。
本質的にはほとぼりが冷めるまで、事件に巻き込まれた鈴を気遣ってのことというのが根本的な側面だ。
「連絡はする」
「結鶴君はどうするの? 将来?」
「さぁな、このまま、跡取りになるんじゃないか?」
そうなると、どんどん結鶴君が遠い存在になるな?
でも、私は彼が好きだから、永遠に忘れない。
鈴はそう思った後に「私は芸能界で成功する。それしか、考えていない」とだけ言った。
そう話し合った後にコロッケを食べ終わり、八幡宮へとたどり着いた。
近くでは別のカップルがカレーパンをトンビにかっさらわれていた。
「ベイカー、知っているか?」
「何が?」
「八幡様って、実は戦いの神らしいぜ? 武運長久を願うのも一興だと思うがおみくじひかないか?」
「結鶴君、無神論者じゃん?」
「無神論者という名の仏教徒。都合の良い時に神を信じ、悪い時はこの世に神はいないと嘯く」
「・・・・・・仮にも私はキリスト教徒だから、あまり賛同できないな?」
そう言いつつも本殿へと向かい、賽銭を済ませると、おみくじを引いた。
結果は中吉だった。
事業は成功するか・・・・・・
「結鶴君、どう?」
「教えない」
天邪鬼め?
そう言った、結鶴に「私も教えないよ?」とだけ言った。
二人で微笑していると、鈴はおみくじをふと眺める。
交際は今いる人を大事にしなさいか?
結鶴君とはどんな関係になるんだろう?
そう考えると、鈴は胸の高鳴りが抑えられなかった。
「ハンバーガーを食わないか?」
「あぁ、ちょっと、高めの奴でしょう? 食べれる? お金的に?」
そう言いながら、二人は八幡宮から小町通へと続く、通路を歩く。
こうして、ヤクザの御曹司とデートしているが私は芸能界で成功するのが夢なのだ。
結鶴の事は好きだ。
でも、私はヤクザの親分の姉さんにはなれない。
芸能界で成功するという夢があるから、ヤクザとの交際はコンプライアンス的にダメだ。
でも、私は結鶴君が好きでしょうがない。
どうしたらいいんだろう?
秋には私はアメリカに行っちゃうし?
そう思いながら、鈴は結鶴の横顔を眺める。
「何だ?」
「・・・・・・整った顔立ちしているなと思って?」
「何もおごらないぞ? お互い、金が無いんだ」
「・・・・・・ウナギとか駄目だよね?」
「学生の身分で食えると思うか?」
「鎌倉って、ウナギの名店が揃っているんだよね・・・・・・ダメかな?」
「ダメだな? 学生の内にウナギは分不相応だよ、ハンバーガーだ」
結鶴がそう言った後に鈴は同人と手を繋ぐ。
「いいよね?」
「・・・・・・いいのか?」
「女の子側からのアプローチは合法だよ。男が無理やりにやると、問題あるけど?」
鈴と結鶴はそう言いながら、手を握り、小町通を歩いていた。
気になるあの子は極道の御曹司。
成功したら、どうするかはこの際、考えないでおこう。
今はただ、結鶴に依存したいのだ。
鈴はそう、自分の中で折り合いが付かない不安定な心境を抱きつつ、胸の高鳴りを覚えていた。
小町通りの混雑はピークに達していた。
続く。
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