第一幕 宿命の御子
雷獣宿りし娘子
登場人物
北の大地には、広大な草原が広がっている。
厳しい自然環境の中で、家畜の世話をしながら暮らす。自由な気質で秩序に従うことを好まず、己を重んじ、時間というものに束縛されない。自然と向き合い、あらゆる可能性を求め、移動しながら新しい結果を導くため、常に変化している。
西暦一三六年――。
北の大地に、
漢の初め、
騎射に巧みで、水や牧草を追って放牧し、定住地を持たない。
百数十人を擁する約二十戸の
空は、晴れている。
ある部族の若い女が、飼育している牛の乳を
突如、雷鳴が
「ひっ!」
驚いた女は、頭を抱えてしゃがみ込むと、はっと、空を見上げた。
すると――。
「これはいかん! 宿ってしまったか――⁉」
息を切らせて駈け寄って来たのは、ひとりの老夫だった。遊牧民らしからぬ漆黒の
「
被った
老夫は、気絶している女の顔を
女が目覚めたのは、自分の穹廬の中だった。
得体の知れない老夫が
「あの……
臆した様子はない。肝が据わっている。寝ぼけた調子で眼を擦りながら、その女は老夫に尋ねた。
「気分はどうじゃ?
「方士の……元緒……さま?」
「南より長城を越え、雷獣を追って来たが、お主に宿ってしまったわい」
「……はい?」
合点がいかない様子で、女は首を
「覚えておらぬか? 稲妻がお主の口の中に入ったであろう? それで気を失っておったところを儂が見付け、この穹廬まで運んだという
「ああ! そういえば、私は、雷に打たれたのでした」
はっとした女は、驚きの表情を元緒に
「……お主、名は何という?」
元緒は、
「
「如羅よ、よく聞くが良い」
元緒は、如羅に
「お主は、雷に打たれたのではない。
「…………」
「十月もすれば、お主は赤子を生むことになろう。しかし、雷獣を宿して生まれくる赤子は、寿命が半分となる」
「…………」
「それと引き換えに、その子が抱く大志は、必ずや成就するであろう」
「…………」
「よって、志は大きければ大きいほど吉」
「……素敵!」
深刻な面持ちで元緒の話に聞き入っていた如羅に、笑顔の花が咲いた。
思いもよらぬ反応に、がくりと
「如羅よ、決して忘れるでないぞ。生まれくる赤子は、大志を遂げる代わりに、寿命は半分じゃ。志の大小に関わらず、寿命は半分」
如羅は、何度も
「そうじゃ、そうじゃ。赤子の
元緒は、背から
「曾て、
如羅は、滅魂の剣を受け取ると、さも大切そうに抱き締めた。
優しげな笑みを浮かべた元緒は、藜の杖を使って立ち上がると、穹廬の扉まで歩を進めた。
「さて、連れを南へ残して来てしもた。早く戻らねば、また叱られるわい」
元緒は独り
如羅も元緒を追うように穹廬の外へ出た。
如羅は手許を
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