第2話 こ、子どもじゃないよ!!

「ただいま。シャワー浴びて来るから、むーもんは部屋に行ってて良いよ」

「分かったもん」


 土や汗を落としたいんだろう、家に着くなり奏音かのんは、駆け足で浴室へ向かって行った。


 さてと、俺も休むとするか。

 長耳をパタパタとさせ、2階にある奏音の部屋へと向かう。


 ホワイトとピンクで統一され、柑橘系のアロマ漂う、実に女の子らしい部屋。片隅に多くのぬいぐるみが飾ってあるウォールポケット。その、最上段右端が俺の定位置だ。


 はぁ〜


 向かいにあるアンティーク調のディ◯ニープリンセスが使ってそうな壁掛けミラー。そこに俺の姿が映るたび、どデカいため息が出てしまう


 20cmしかないのに頭と言うか顔がデカい2頭身……全身は白くモフモフに、浮遊するのに羽ばたかせる長耳……愛くるしい大きい、キュルルンまん丸お目々、長く短いフワフワ眉毛。


 完璧にマスコットじゃん!! 魔法少女にくっついてるマスコットじゃん!!

 実際くっついてるんだけどさぁ


 なんでこうなったの? いつからこうなった??  

 なんとな〜く。オッサンだったってのは感じるのだが、どうして魔法少女にくっついてるマスコットになったんだよ!?


 気付いたら奏音と楓歌ふうかにくっついて、魔法少女の支援をしていた……



「あっつ……なんでエアコン付けてくれてないの〜」


 相変わらず少し舌っ足らずな声が聞こえてきたかと思えば、手で顔を仰ぎながら奏音が入ってきた。

 下着姿も見飽きた光景でイチイチ驚く事も感動もない。

 最初からそう言った感情が欠落してると言うかなかった気もするが


 奏音はすくざまリモコンを手に取りエアコンを付けると、床にペタンと座った。


 ドライヤーを持ち鏡に向かい、手慣れた手付きで髪を乾かして行く。

 アホ毛だけはしっかりと立ち上がってるのが気になる。


「長いからシャンプーもドライヤーも面倒だよね。むーもんに手伝ってもらうと毛が付いちゃうしね」


 鏡越しに問い掛けてディスってんじゃねー こっちは、そのモフモフのせいでめちゃくちゃ熱いんだぞ


「髪を切れば良いもん」

「そういう問題じゃないよ。乙女心分かってないなぁ」


 オッサンだぞ! 分かってたまるか!!


「それに楓歌も、ロングヘアーが好きだし……ね」


『ね』ってとこで、照れんな。本当にメンドくせー


 髪を乾かし終わると、クローゼットから服を取り出し両手に持つ。



「むーもん。服、どっちが可愛いと思う? 」


 優柔不断な奏音だ。はっきり言わないと、また時間が掛かる。こういう時はアホ毛を見て傾いてる方が奏音の選ぶ方だ。

って、アホ毛は左右にビヨンビヨン動いてるだけだった……勘で行くか


「右のロンT、デニムスカートもん」


 鏡に合わせながら両手に持った服を交互に当てていく奏音。


「楓歌が可愛いと思ってくれる方だよ。それなら、左のホワイトキャミソールのワンピースだね」


 知るか、決まってんなら最初から聞くな! タイパが悪過ぎる!!



「これにストローハットを合わせてバッチリだね」

「虫取り網と虫かごも持って行ったら良いもん」


 鏡に向かってウインクする奏音に一言掛けた


 「こ、子どもじゃないよ! 」


 いや、怒り方が両手をグーにして前のめり気味って、デフォルメされたガキだろ


「汗も止まったし、もう行くよ」


 せわしなく勉強道具やお菓子を、ホイホイとトートバッグに入れる奏音


 行きたくはないが、仕方なく長耳をバタつかせトートバッグに入る


 人目に付く場所に行くときは、バッグの中に入ってるか、大き目のぬいぐるみキーホルダーとして同行しているもん


 あっ、心の声でも『もん』付くようになっちゃった……

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百合の魔法少女のマスコットになっているので後方腕組みオジサンやらさせてます ちーよー @bianconero

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