百合の魔法少女のマスコットになっているので後方腕組みオジサンやらさせてます

ちーよー

第1話 ウチの魔法少女が百合らしい

 違和感を感じではいたが、そういう事か。やっと突破口が見つかった。


奏音かのん。あのさむらいが本体じゃないもん。隣にいるぬえの方が本体だもん」

 

くっそ、いつまでも語尾の『もん』が慣れねぇ。キャラ付けで自動的に発してしまうとは言え、なんだよ『もん』って!!


「え? どういう事!? 」


 奏音が驚いた時に出るアホ毛がピンっと立ったし、やっぱり気付いてなかったか


「侍の影の形が変だもん、おそらくデコイだもん」

「デコイ? どうりで攻撃が効かないはずだよ」



 額についた土くずと汗を拭いながら肩で息をする奏音。

 魔法ステッキを杖代わりにして、歯を食いしばり片膝立ちの楓歌ふうか


 満身創痍とはこの事だな。こりゃ、やべー……ただ、こんな何処で終わる訳には行かない



楓歌ふうかの『足止シュペールングめ』を使うんだもん! 」

「でも、もう楓歌は」


 奏音と同時に楓歌に視線を移した


「あーーーもう! やるっきゃないんだからやるわよ!! 」

 力を振り絞り何とか立ち上がろうする楓歌


「ダメだよ、楓歌。これ以上『足止シュペールングめ』を使ったら」


 確かに余力は奏音に比べて、ほとんど残ってないだろう。残ってないだろうが鵺を倒すには


「奏音。後でたっ〜ぷり、魔力貰うからね」


 おい、お前はこの状況で唇を舌で舐めるな


「……うん、分かったよ。お願い楓歌」


 そして、お前は少し照れながら言うな



 目を瞑りスーッと息を整えた楓歌が一呼吸し、目を開けた。


「いざ! 我が名において大地に命ずる、厄災をもたらす彼の者に地縛を『シュペールング』」


 唱えると同時にステッキを地面にトンッと叩くと、みるみるうちに鵺の4本の足に地面が絡まっていく


 魔力がもう残ってないのか、楓歌は膝から崩れ落ちたが、鵺の動きは封じた! 


「奏音。今だもん!! 」

「分かってるよ」


 今度は奏音が魔法のステッキを頭上に掲げた。


「空気・水・光・纏いし女神の口づけ、祝福を受けし切り裂く天空の龍たちよ。わたしに集え」


 ステッキを鵺に向けて振り下ろす 


「一点突破! 突き刺せ『ブリッツローザ!! 』」


 ステッキから放たれたピンク色の雷が、鵺の体に突き刺さってやがる

 え? やだ!? 何かグロい


 鵺は涎を垂らしながらピクピクと体を震わせた後にデコイである侍と一緒に消滅していった


「わーい! 真夏の大勝利!! 」


 魔法少女らしく可愛く決めポーズをするのは良いが『真夏』って季語いる? それにお前の楓歌たんが地面に倒れてるぞ


「楓歌。しっかりして! 」


 すぐさま楓歌に駆け寄り膝枕ですか。もう、何度も観た光景ではあるが


「か…かの……ん。は…やく」

「わ、分かったよ」


 膝枕したまま口づけをする2人を眺めるオッサン……なんで俺がこんなの観なきゃならんのだ


「かのん、もっと。全然足りない」


 おいおい奏音の魔力が楓歌に補充されて来たのか、身を起こした楓歌が逆に奏音を押し倒してるじゃねーか。アホ毛までしなしなになってるし


「奏音のぜーんぶ、貰っちゃうもんね」


 もう魔力補充に必要ないベロチューやん。お互いの口からエッロイ糸引いちゃってるし、奏音からは吐息漏れちゃってるし、目が完全にトロンとしてるし


「ふ、ふうか……わたし、何かふわふわして来た」

「ふふふ、アタシもだよ奏音」



 もう十分だろ。人気ひとけのない公園とは言え、このままだと楓歌が奏音の服を脱がしてしまう勢いだ


「二人とも、まだ敵がいるかも知れないもん。ここから早く離れるもん」

「やだ、まだ魔力足りない。誰かのせいで『シュペールング』使い過ぎたし」


 コイツ!! 確かに俺が侍を先に倒せとは言ったが、間違う事だって俺にもあるわ!!


「誰かさんは宙にプカプカ浮いて、後方指示だけしてれば良いもんね」

「ごめんだもん……今度は頑張るもん、続きは家でやるもん」


俺だって好きで魔法少女のマスコットになったわけじゃねーよ

 しかも『家で』って言った瞬間に楓歌から『クフフ』って、怪しい笑みと、一緒に気味悪い笑い声が聞こえたんだけど


「奏音、テスト勉強もしないとだし。アタシの家で良いよね」

「い……良いけど……一度、自分の……家に戻るよ」


 ハァハァ言ってんじゃねぇ 魔力与えたとか関係なく、お前は戦ってるときより息が乱れてるじゃねーか!

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