第6話 内柔外剛


「どうしようミカエラ、イクスが帰って来ない!?」

「落ち着いてクレス、イクスだってもう大人のドラゴンなんだから、滅多な事は起きたりしないわよ」


 フェニックスを求めて南方地域の火山帯へ向かったイクリプスは、ライゼンがフェニックスを捕らえて帰って来たにも関わらず3日経っても戻らなかった


 大気圏外へ飛び出し弾道飛行が出来るイクリプスなら、その気になれば20分も掛からず戻れる距離である

「何言っちゃってくれちゃってんの!?イクスは未だ子供よ!?」

 この世界では13歳で成人と見做され、結婚して子供を育てるのが普通だ

 不老不死で悠久の時を生きるドラゴンからすれば、13年など瞬きする程でも無いかも知れないが、イクリプスはもう15歳だ

 とっくに肉体的にも精神的にも立派な大人であると言えた


「あの子に限って大丈夫だって、もしかしたら道中で素敵な出会いとかあったりしてるかもよ?」


「すすすすす素敵な出会いってナニ!?」


「いや、だから野生の雌ドラゴンと甘い関係に為ってたって不思議じゃ無いわよね?」


「なっなななななな …… 」

「そう言うお年頃って事よ、ラムエラとバラキエラを見なさい?10歳で結婚した挙句、子供迄作ったじゃない」


「そりゃ、あの2人がおかしいのよ」


 ミカエラと守護天使ミカエルの娘ラムエラ長女と、ミカエラとアシュタローテの娘バラキエラ次女の2人は、姉妹でありながら10歳の時に結婚して、更にミカエラに滅っせられた創造神エロヒームの呪いを再現したバラキエラのお陰でラムエラが両性具有と為り子供まで授かって居た


 そのユピテラも12歳になる


「おかしいとはご挨拶ね」

「えっ、あ … ゴメン言い過ぎたわ」

「まぁ良いけどさ … イクスだって何時までも子供扱いしたら可哀想よ?」

 クレセントのメンヘラぶりは慣れっこだ


「クレスにはアタシが居るじゃない♡もう良い加減、子離れしないとイクスが可哀想よ?」


「えぇ〜?そんな事言われても …」

 確かにクレセントはミカエラLOVEだが、それとこれとは別である


「そもそも誇り高き黄金龍ともあろう者が、行きずりの相手となんて、例えミカエラが許してもアタシが許さないからっ!?」

 相変わらずプライド高い意識が、クレセントの子離れを邪魔していた


「う〜ん、思ったより拗らせてるわね …… 」


 その頃当のイクリプスは、ライゼンの膝枕で寝た振りを続けて居た

 生け捕りにしたフェニックスをミカエラへ届けると直ぐ、張り倒したイクリプスが心配になり転移で戻ったライゼンは、一回転捻れたイクリプスの頭を元通りに戻すが、中々意識が戻らず途方に暮れた


「どうしよう … 不死身なんだから怪我は直ぐ治る筈なのに、どうして意識が戻らないの?」


 ライゼンも不老不死のドラゴン種の頂点に立つ『龍種』なので、必要の無い治癒魔法なんて知らなかった

 例え致命傷を負っても勝手に回復するし、病気に掛かる心配も無い


 当然、薬草に関する知識も無ければ、そもそもドラゴンに薬が効果有るのかも怪しい


「ねえ、お願いだから目を覚ましなさいよ … ちょっとビンタしただけで死んだりしないよね?大体、イクスだってドラゴンの端くれなんだから死んだら承知しないわよ …… 」

 ライゼンは動かないイクリプスの頭を抱き抱え、涙を流した


 頬に止め処無く大粒の涙が垂れて来て、恥ずかしく為りイクリプスは目を開ける

「ライゼン …… 泣かないで?」


 耳元で囁かれてライゼンはガバっと跳ね起きると、イクリプスと目が合う

「 …… 良かった、気が付いたのね!?」

「ライゼン、君 …… 僕の為に泣いてたの?」


 慌ててイクリプスを放り出し、距離を取るライゼンは耳まで真っ赤にしながらイクリプスの言葉を否定する

「そっ、そんな訳無いでしょ!?ただ、私がビンタしたせいだから、ちょっと …… そう、ちょっとだけ心配になっただけよ!勘違いしないでよね?このマザコン!!」


「ありがとう」


 ボッと頭から湯気を出したライゼンは恥ずかしくなり転移して消えた


「 … 相変わらず素直じゃ無いなぁ、ちゃんとお礼しなきゃ」

 イクリプスもかなりの朴念仁である

 

 

 

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君が好きだと叫びたい アガペエな呑兵衛 @ginnoji

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