2-3
「っはぁ、お前まだガキだろ。急にエロくなんな」
久々に一緒にシャワーを浴びる彼から、低い声が聞こえる。
『知らない』
「言えよ。どこでスイッチが入るんだ」
『最近知ったんだよな』
「あ?」
『愁は責められる方が好きだって』
「ああ?」
私の身体を洗う彼の手が止まる。
ーービシャッ
『!?』
顔の前で勢いよく出されたお湯に、むせる私。
「ガキが偉そうに言ってんじゃねえぞ」
『けほっ!けほっ…はっはぁ』
「やられてやってんだ。勘違いすんな。機嫌取りだろあんなの」
『…っは?』
困った表情の彼はもうどこにもいない。
私の後ろにいるのは、周りから最恐だと言われた1匹の狼。
「責められる方が好きだって?違えよ。責めてるお前を見るのが好きなんだ。お子様はこれだから困るよな」
『…っ!』
あぁ、彼には到底敵わない。
「まあ、あれにはやられたけど」
『…あれ?』
「サザンカの写真の意味」
私が彼を驚かすことができたのは、それだけ、か。
ーちゅ
「背中の痕、やっと消えてきたな」
『そう?それは良かった』
背中に寄る彼の顔に、ビクンと震える身体。
ーベロ
『んっ…』
「ロシア語、夜でいいか?」
ーーー狼には敵わない。
けれど。
携帯の画面の写真は…ピンク色のサザンカ。
花言葉は"永遠の愛"
狼は気付いていないだろう。
ーーーつまり、私の勝ち。
狼と虎 珠子 @tokko921
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