2-2
「なあ、終わったら今日は部屋、帰るのか?」
彼とは違う階の部屋を借りた私は、ロシア語を知っているという誘い文句で、たまにこの部屋に来て課題をしている。
『せっかく部屋があるんだ。夜は帰る』
「解約は?」
『しない』
「金払ってんの俺だぞ」
『それが嫌だから安いアパートにしようと思ったら、愁がそうするって言ったんだろ』
私は断ったのに。ずるい言い方。
「瑞綺……しろ」
急な上擦った声に、下半身がきゅんとなる。
ずるい言い方の仕返しだ、と唇の端にキスを落とす。
「ロシア語教えるから、な?ちゃんとしろ」
なんて、ずるくて甘い誘い文句なんだろう。
『今日はちゃんと教えろよ』
「わかった」
ーちゅう
そっと噛み付けば、腰に回る手がさっき着たばかりの服を捲っていく。
ーちゅく
自分から舌を入れれば、彼の漏れる声が聞ける。
「っん……は、ぁ」
ーちゅくり
「はっぁ…」
彼の冷たい手が、下着を身につけていない素肌を刺激する。
『っんん』
掴む腕を薄目で見れば、サザンカに皺が寄っていて。
何に興奮したのか、私の下半身は熱くなっていく。
「っ…ベッド行くぞ」
唇を離し、そう言う彼の身体を弱い力で抑える。
『ここがいい』
「っ!」
鋭かった目が開いていく。
そのちょっとの変化さえ、今は私の興奮材料で。
サザンカの咲く腕を執拗に指でなぞり、赤く濡れる唇に顔を寄せる。
「っく……っっ」
『は、ぁ…っ』
リビングに響く淫らな音と、絡まる熱い息。
「瑞綺っ、とま、れ…っ」
『っや、だ』
「っん…締めるな」
自ら乱れる私は、誘ったのはお前だろと心の中で言い返す。
『っひたむき、って興奮するよな…』
「はぁ………っあ?」
『いや……知らなくていいや』
私を興奮させるものなんて、知らない方がいい。
彫られた黒いサザンカにさえ、欲が出る。
彼と一緒に住んだら、私はどんどん狂っていくだろう。
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