第六話


 清之助さま過ごす日々は、夢のようでございました。




 わたくしが雛の時分に、手負いとなっていたところを介抱してくださった幼い清之助さまの柔らかかった手は、いまではごつごつとした男性の手をしておりました。


 わたくしはその手に頬をあて、そのぬくもりを感じました。


「わたくしは、ずっと丹頂鶴のあの番の絆に憧れておりました。連理の枝となり比翼の鳥となり、この先もずっと共に在りましょう」


 わたくしがそういうと、清之助さまはわたくしを強く抱きしめてくださいました。




 三月みつきほどの後、わたくしは産卵いたしました。


 今までのような無精卵ではなく、これは清之助さまの精を受けた卵です。

わたくしどもの産卵は、人が子を産むのとは違ってかなり早く、そして生まれた卵についてはひと月の間、夫婦で一日置きに交互に温めるのです。


 それはとても幸福な作業でございました。

卵から孵った鳥御門の女子は、初めのうちは鳥の雛の形をしているのでございます。

わたくしと清之助さまの雛が孵ったなら、さぞや愛らしいものであったでしょう。


 しかし、わたくしは見誤っておりました。

まさか、清之助さまが裏切るとは。

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