第五話

 夜中に屋敷を抜け出していたこと。

 人前に姿をさらしたこと。

 無断で卵を与える約束をしたこと。

 勝手に番を決めたこと。




 それらは酷く鳥御門とりみかどの大人たちを怒らせました。

わたくしは数日、座敷牢に閉じ込められましたが、やがて清之助さまが鳥御門が選ぶ婿として引けを取らないことがわかると、その怒りも静まってゆき、わたくしは牢から出ることができました。


 本来、鳥御門の者の姿を見た者は、本来は切り裂かれ、わたくしどもの“糧”とされます。

それほどまでに、その姿は秘匿とするところでございました。


 清之助さまには、重々、その姿について人に言わぬように。

言えば最後、千代の命もないと言い含めておきましたが、それでもできるだけ早いうちにと、数日の後には鳥御門に迎え入れられました。


 慌ただしい中で祝言を上げ、清之助さまには『鳥御門の卵』を用いたさまざまな料理がふるまわれました。

この『鳥御門の卵』というのは、要するに、食べた者をわたくしたちと同族に作り変えていくものでございます。


 ただ、貴重な食材故、巷の人間が実際にそうなるまで食べることはできず、結果としては、病や傷が癒えるのみとなるのでございます。


 鳥御門には、男子は生まれません。

なのでこのようにして、人間の男に沢山の卵を食べさせて、鳥御門の人間にするのです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る