日記 貴方へ

織風 羊

第1話 自分へ



 朝起きたら歯を磨き、顔を洗う。

髪は手櫛で充分。

通勤途中の道端の自動販売機で缶珈琲を買い、職場の廊下で一気に飲み干す。


 仕事が終われば、もう既に日は暮れていて、靴音だけが響く路地裏の帰り道。

手探りでスイッチを入れた灯で部屋が照らされると、我ながら乱雑な居住いにうんざりさせられる。


 窓辺に目をやれば、一輪挿しの花瓶で艶やかに咲いている名前も知らない花だけが自分を迎えてくれる。

気楽なもんさと、一人暮らしを慰めれば、こんな部屋でも咲いていてくれるお前のように、そっと生きていければそれもいいと、話しかけてみる。

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