可能性は背中合わせ。観測されて見える事実? 孵化させて紡ぐ現実?

シュレディンガーの猫。
いわゆる漁師学上の思考実験。箱の中に猫と、量子状態で作動する仕掛けを入れると、観測するまでは「生きている状態」と「死んでいる状態」が重ね合わさって同時に存在するとされます。観測した瞬間にどちらか一方へ決まる、という量子の特徴を極端な例で示したもの――。

よく分からんとなるのですが。
今回の「シュレディンガーの卵」を読むと、なんというか腑に落ちてきます。

つまり、どっちがどっちか分からない状態の隣り合わせ。
本作では、人間にとっての神、聖王竜。魔族にとっての神、魔王竜。そのどちらかと思われる卵が発端となって、大混乱に陥るという。ファンタジースキーをくすぐる展開となっています。

でも、観測されない限り分からない。
孵化してみないと分からない。
では、どうするのか――。


本作はカクヨムコンテスト11【短編】エントリー作かつ、お題フェス「卵」参加作品です。
数々の卵がエントリーされていますが、この作品は群を抜いているというか。自分では、とてもこのような作品を書けない。書き手、作家の神髄を見た気がします。


可能性は背中合わせ。観測されて見える事実? 孵化させて紡ぐ現実?
その先にあるのは――。




爽やかな読後感と、胸いっぱい暖まるホットココアのような物語。
本当に、暖かい。

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