概要
六十年後の手紙 ── 琥珀色の静寂を、終わらぬワルツを再び呼び醒ます
「あの冬の夜は、まだ終わっていなかった。」
二〇一三年。老いたフランチェスカの元に届いたのは、イタリアの秋を切り裂く一通の封書だった。
六十年の時を超えて届いたその一筆が、止まっていたワルツを――終わることのない「琥珀色の静寂」を、再び踊らせる。
舞台は一九三七年、狂騒の帝国ホテル。
外交官の娘として異国の言語を自身の「鏡」として磨き上げる少女フランチェスカは、二人の男と出会う。
夜の闇を裁断したような冷徹なエリート・九条影臣と、日だまりのような光を瞳に宿す若き給仕・佐倉陽介。
滅びゆく帝都、軍靴の足音が祝祭を侵食する中で、彼女の喧騒な時代を写す眼差しは、二人と共に歴史の深淵へと沈み込んでいく。
時代という濁流に抗い、それぞれの想いを貫こうとした者たち。
手
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