「明日」は、 誰かの手の中で生まれている。

「明日が来る」という当たり前の出来事を、卵という具体的なかたちにした発想が印象的で、童話のようでありながら、どこか現実にも重なって感じられます。

ルルの気持ちは特別な悪意ではなく、「少し楽をしたい」「誰かが代わってくれるかもしれない」という、ごく人間的な感情から始まっています。
だからこそ、その結果として起きた出来事が、強く胸に残るのだと思いました。

神さまの選択も、責めるようには描かれず、ただ静かに世界を守るための行いとして語られます。
そこに大きな言葉や説明がない分、読者それぞれが受け取る感情に委ねられているのが、この作品のやさしさだと感じました。

最後の場面は、悲しさの中にほんの小さな希望が置かれていて、物語全体をそっと包み直してくれます。
「明日」を当たり前だと思って生きている自分自身を、見つめ直したくなる、そんな余韻の残るお話でした。

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