言葉の一つひとつが、音や光として静かに立ち上がってくる作品でした。木琴のような音、雨粒の間隔、月光の冷たさとやわらかさが、説明ではなく感覚として伝わってきます。クラゲの動きはとても控えめなのに、縮こまり、ほどけ、またたゆたう様子が繰り返されることで、時間そのものがゆっくりと伸びていくように感じられました。反復される表現も心地よく、読んでいる側の呼吸まで自然と落ち着いていきます。眺めるように読むことで、夜の海に身を預けた気分になれる一篇でした。