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概要
境界の鍵は、本棚と押し花と紅茶。
薄灯坂の途中にある小さな店、「カフェ・薄灯」。噂と誤解に押し流されるように会社を辞めた成瀬暮葉(なるせ くれは)は、祖母から継いだその店の再開準備を進めることで、もう一度息のできる場所を手に入れようとしていた。だが、日が暮れた店内で本棚の背板がわずかにずれ、冷えた湖の匂いとインクの気配が流れ込む。通路の先には、玻璃湖畔書架街――感情が「反照」として湖面に残り、放置すれば人を過去の悲しみに繋ぎ止める世界があった。秩序を守る書架院は反照を物語として封じるが、その“救い”は時に個人の物語を没収する。写本士見習いリュカ、配達係の少女ミナト、そして上席写本士クラウス。彼らと出会うほどに、祖母が隠してきた秘密と、白紙になった物語の束――「白紙事件」の影が濃くなる。暮葉は問われる。封じるか、封じないか。だ
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