妃候補のふりをして入宮したら、皇帝陛下の“裏の護衛”になりました。

十八歳の若き皇帝・周曜衡が江南へ「妃選び」に訪れる――それは世間が信じる華やかな噂話でしかなかった。
本当の狙いは、江南に張り巡らされた塩運・織造・金の流れの“網”。皇帝の印が一度でも狂えば、国は簡単に傾く。

選ばれた少女・楊妙妙は、目立たず、従順そうで、どこにでもいる顔をしている。けれど彼女は、宮廷を生き延びるための「規矩（ルール）」を武器に、毒ではなく“失態”で人を潰す後宮の罠を切り抜けていく。
そして皇帝から授けられた小さな玉扣（ぎょくこう）が、禁じられた回廊への扉を開いた時――妙妙は気づく。
この宮には、皇帝だけではない“別の中心”がある、と。

金冠は栄光ではなく的。
灯の下で笑うのは誰か。
鍵になるのか、駒として捨てられるのか――妙妙は網の中心へ踏み込んでいく。