第2話 ソクラテスとウィトゲンシュタイン 無知の知(不知の自覚)と語り得ぬもの
俺「ソクラテスの“無知の知”と、ウィトゲンシュタインの“語り得ぬもの”。この二人、時代は違うけど、やってることはだいたい“黙る準備”なんだよね」
ショーペンハウアー「沈黙を礼儀として理解した者たちだ。ソクラテスは知らないことを知っていたし、ウィトゲンシュタインは語れる範囲を知っていた」
綾乃「え、でもそれってズルくない? 分からん言うて、最後なんも言わんやつやん」
ショーペン「ズルではない。むしろ誠実すぎる。人間は本来、分からないことを分かった顔で語る存在だからな」
俺「ソクラテスは街角でそれを暴いた。質問を重ねて、相手が“自分も何も知らない”地点に落ちるまで」
綾乃「めっちゃ嫌な絡み方やんそれ。哲学的カツアゲや」
ショーペン「だが彼は答えを与えなかった。無知の自覚そのものが、魂を正しい位置に戻すと考えた」
俺「一方ウィトゲンシュタインは、紙の上で同じことをやった。“ここまでは言語”“ここから先は沈黙”って線を引いた」
綾乃「線引いてドヤるのも、それはそれで腹立つけどな」
ショーペン「彼は世界を説明しようとしたのではない。説明が暴走する地点を封鎖したのだ」
俺「要するにこの二人、真理を語らない代わりに、“語ってはいけない場所”を示した」
綾乃「それ聞くと急に優しく見えるわ。無理に答え出さんでええってことやろ?」
ショーペン「そうだ。倫理、美、意味、救済——それらは命令文ではなく、沈黙の側に属する」
俺「現代は逆だね。分からないことほど、解説動画とハウツー記事が量産される」
綾乃「“3分で分かる人生の意味”とか、逆に怖いわ」
ショーペン「語りすぎる社会は、沈黙に耐えられない社会だ」
俺「ソクラテスは処刑され、ウィトゲンシュタインは黙って立ち去った。どっちも、“分からなさ”を守った代償」
ショーペン「哲学とは、答えを増やす仕事ではない。沈黙に値する問いを選別する仕事だ」
綾乃「ほなまとめな。分からんもんを分からん言える人が、いちばん賢いって話やな。…それ言うの、意外とむずいけど」
俺「まぁ、分からないって認めるの恥ずかしさはあるからね」
綾乃「その辺うちは大丈夫やで。「分からんもんは分からん! 」」
ショーペン
「衒学趣味をこじらせた馬鹿よりは、よっぽどマシな態度だな」
綾乃「ショーペンさん言ってることは分かるねんけど、テンポ早よして! M-1の予選に落ちるで! 」
ショーペン「いや出ないのだが?
」
俺「草☘️」
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哲学漫談 ショーペンハウアーと関西弁女子のおしゃべり劇 zakuro @zakuro_1230
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