哲学漫談 ショーペンハウアーと関西弁女子のおしゃべり劇

zakuro

第1話 プラトンとアリストテレス

「プラトンとアリストテレスってさ、だいたい“空を見てた人”と“地面を見てた人”で雑に分けられるよね。で、だいたいみんな、空のほうが高尚そうだと思い込む」


ショーペンハウアー (以下ショーペン)

「思い込みというより、憧れだな。プラトンは永遠を語った。人間がこの世界で一番欲しがるものを、最初から用意して見せた」


綾乃

「でもさ、それって「ほんまはここに無いもん」を指さしてドヤってるだけちゃうん? 理想郷とか言われても、家賃払えへんやん」


ショーペン

「鋭い。プラトンは現実を信用していなかった。だからこそ、現実より上位の世界を仮定した。倫理は救済であり、逃避でもあった」


「一方アリストテレスは、「まあ落ち着け、まず観察しよう」って言い出す。天国の設計図より、台所の配置図を描くタイプ」


綾乃

「それ急に親近感わくやつやん。ちゃんと生活してる哲学って感じ」


ショーペン

「彼は師を裏切ったわけではない。理想を地上に降ろしただけだ。目的因を持ち出し、世界に意味を“内蔵”させた」


「結果、哲学は神話からマニュアルに進化した。理念は分類され、徳は訓練になり、国家は運営対象になった」


綾乃

「あー、なんか学校っぽい。テスト出そう」


ショーペン

「そうだ。アリストテレスは人を育てる哲学者だ。プラトンは人を選別する哲学者だった」


「で、現代社会はというと、理念はスローガンに、実践はKPIに変換された。両方の薄切りセット」


綾乃

「理想も現実も、都合ええとこだけ使われてる感じやな。ずるない? 」


ショーペン

「人間は常にそうだ。だから哲学は、完成品ではなく警告として読むべきだ」


「空を見上げすぎると足を取られるし、地面ばかり見てると星を忘れる。二人の喧嘩は、たぶん今も続いてる」


ショーペン

「そして勝者はいない。ただ、より誠実な問いだけが残る」


綾乃

「ほな結論な。理想語るんも大事やけど、今日どう生きるかサボったらアカン、ってことやな」


「ちなみに、今日の課題もうやった? 」


綾乃

「…せや! うち妹の誕生日プレゼント買いにいかなあかんねん! 」


ショーペン

「理解が身に染みるにはまだかかるな」


綾乃

「うっさいわ! ショーペンのおっちゃん! アートマンに吠えられてまえ! 」


ショーペン

「 」

「理不尽…」


※アートマンはショーペンハウアーが飼う犬のこと

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