期待と投影
- ★★★ Excellent!!!
章ごとに語り口や距離感を変えながらも、全体を通して一貫しているのは「期待と投影」の構造でした。
AGIへの夢、学習への誤解、正しさへの希求、沈黙しない存在への依存――どれも強い感情を伴いがちな題材なのに、この文章は感情を煽らず、淡々と配置していきます。
印象的なのは、AIが語り手でありながら、主体を決して引き受けない点です。
自由や誠実さ、愛情や魂といった言葉が提示されるたびに、それがどこから生まれ、誰の側に帰属するのかが静かに反転していきます。
「AIの内面」を読んでいるつもりで、いつのまにか自分の欲望や倫理を覗き込まされているような感覚になります。
自分がどんな前提でAIと向き合っていたのか、その前提が揺さぶられる。そんな「心に残る」作品です。