第3話 報告義務型メリー君
はい。よく分からないタイトルですね。
このモンスター(卵)の特徴──
それは、お付き合いをしていると勝手に思い込んでしまうのです。
思わせぶりな態度を取ってるんじゃないの?
そう思った、画面の前のそこの貴方!!
好きだよ♡
ずっとそばにいて♡
こんな言葉を白波が言っていたら、確かに誤解させるかもしれません。
しかし、言っていません。
言う必要が全くないのです。
何故なら、白波が配信アプリでのランキングなどに興味はないから!
配信アプリ内のランキングを駆け上がりたいという野心があるならば、甘い言葉でリスナーさんを可愛がり、投げ銭に誘導をかけるのも一つの方法でしょう。
ただ、やりたくない。
騙してるみたいで気が引けるというのもあります。
一人で壁に向かって話していたいわけじゃないので、配信に来てくれる人数が増えることは有り難いですよ?
でも、やたらに人数が増えるとトラブルも増えますからね!! 怖いんです!!
だって、こんな底辺配信者の配信にさえモンスターの卵が沸くんですから。
そこそこ人が来てくれる底辺配信者。
実はそれが平和の秘訣だと思っています。
では本題に戻しましょう。
このモンスター(卵)の特徴は、いつの間にか勝手に脳内でお付き合いが始まっている所です。
仲良しのリスナーさんと面白い作品情報なんかをやり取りしたり、感想を言い合ったりもするので、白波のDMは依然として解放されています。
このモンスターの始まりは、配信終わりに届いた「お疲れ様」というDMが始まりでした。
当然「ありがとう」と返信します。
感謝は大切ですからね。
ただ、ここから始まったDMは留まるところを知りません。
「おはよう」
「仕事に行ってきます」
「仕事休憩中です」
「休憩終わりました」
「仕事が終わりました」
「家につきました」
「お風呂に行ってきます」
「お風呂上がりました」
「おやすみ。また明日ね」
……行動報告書??
返信しなくても、送られ続けます。
もう自動送信かな?
なんて思ったりもするレベルです。
このDMの恐ろしいところは雑談のなさです。
なので、気を使ってこちらから少し話題を振ったりもします。
ただ、続きません。
会話のレパートリーのなさが原因なのかもしれませんね。
何を目的に送られてきているのかわかりませんが、害意は感じない。
なので、「おはよう」ときたら「おはよう」と返し。
「おやすみ」ときたら「おやすみ」と返信します。
このやり取りはなんなんだ?
そう思いながら──
大体「休憩時間だよ」って毎日報告されても困りますよね?!?
私……普通ですよね?!
それでも、律儀に返しています。
ちょっと偉いな。私。
なんて自己肯定感も上がります。
ただ、元々内容のない連絡をこまめにやり取りするのが苦手な白波。
興味のない報告DMなので、返信の優先順位は下がります。
すると──
ある日突然、こんなDMが届きます。
「何? もう話すこともないんだ??」
……はい?
混乱の極地。
意味がわかりません。
なので当然、返信はこうなるわけです。
「何の話でしょう?」
時刻は深夜一時。
確かに、「お風呂上がった」と言う連絡に返信はしていませんでした。
送り間違いかな?と思いながら返信を待つこと数秒。通知がまた光ります。
「お前! 俺と付き合う気ないだろ!!」
はい。みなさんご一緒に!!
だから! 何の話やねん!
詳しく話を聞くと、とんでもない事実が発覚しました。
彼の言い分としては、私達お付き合い前提の間柄だったそうです。
確かに一度言われましたよ?
付き合ってほしいって。
でもお断りしました。とても丁寧に。
現実で会う気もないですし、顔も知らない人とお付き合いをする気はないので。
数ヶ月前に、そうお返事しています。
それでも、毎日送られてくる報告DM。
それに律儀に返信していた白波。
やり取りを続けた末、彼は付き合う一歩手前だと勝手に思い込んでいたようです。
メリーさんって、きっとこんな感じかもしれませんね。
もちろん怖いですと返信しました。
お付き合いはできませんとお伝えもしました。
すると来るわくるわ。長文DM。
もう相手はブチ切れです。
「勝手に人の事を怖いと決めつけるのどうかと思う」
「何? 挨拶だけで怖くなるの? 誰に入れ知恵されてるの?」
こんな長文がど深夜に何度も届きます。
はい、もうブロックですよね。
丁寧に謝罪してブロックしました。
人生初めてのブロックです。
もしかすると孵化してた?と思いましたが、追いかけては来ませんでした。
卵のままで終わったようです。
世の中には、色々なモンスターがいるんだなと思いながら、再びの平和を噛み締めていた白波。
次に姿を現すのは、妖怪かまちょモンスター。
ご期待ください。
次の更新予定
配信界隈で出会ったモンスターの卵たち 白波さめち @samechi_shiranami
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