第2話 ガチ恋ヤンデレキメラ
はい。タイトルからして不穏ですよね。
ガチ恋とヤンデレが組み合わさったキメラモンスター(卵)です。
彼らはそっとリスナーに紛れ込んでいます。
そしてある日、配信用SNSにダイレクトメッセージことDMが飛んでくるのです。
「好きになっちゃいました」
はい。びっくり。
なんせ白波、配信では顔を出していません。
もしかすると、ボイスチェンジャーを使ったゴリゴリマッチョのおじさんの可能性だってあるんです。
それなのに、好きになったと連絡がきます。
こういう時、私は思います。
――どこを?
だってそうですよね?
私が嘘をついている可能性だってあるんです。
配信界隈では、ホストクラブなんかでいう『色恋営業』を行う配信者だっているわけですよ。
アプリ内で成り上がるために。
本音で全てを語ってる保証なんてない。
顔面だって分からない。
白波の配信は、ただ好きなものを語っているだけなので、見えているのはその側面だけのはず。
どこを見て好きになったの?
とても……疑問に思うわけです。
でも、このガチ恋勢は配信者を好きになってしまうんです。
そしてこのモンスターの卵であるガチ恋勢の厄介なところは、付き合った時の妄想を押し付けてくるのです。
「お風呂一緒に入りたい!」
「一緒のお布団で寝る! 今から行くね!」
こんな感じのDMが毎日のように飛んできます。
どう思いますか?
貴方はどう感じますか??
『怖い』ですよね?!?!
だってこの人、彼氏じゃないんだから!
これを遠回しに断ります。
強く断れないのは、他の配信者さんとの繋がりがあるからです。
このモンスターが仲良しの配信者さんの所にも行っているリスナーさんだったりすると、まあ気まずい!
白波の強い拒絶で、仲良しの配信者さんのリスナーが一人減る! なんてこともあるわけですから。
他にも強く拒絶できない理由があるのですが、それはまた追々。
とりあえず、断ります。
しかし、効果はありません。
不屈の精神で立ち上がり、翌日も、その翌日も同じDMが届きます。
うん、ホラーですね。
心を無にしながら『興味はありません』という内容のDMを、失礼に当たらない程度に時間をあけてやり取りします。
するとある日、彼らは進化します。
卵のまま、進化するのです。
どう進化するのかって?
簡単です。病むのです。
病んでるアピールをしてくるのです。
放置はしづらい病みアピールが直接届きます。
もうこの辺りからメンタルが削れてきますね。
DMの通知が鳴るたびに憂鬱な気持ちになります。
モンスターの卵は優しくするとすぐ復活します。
デレデレと甘えて来たりもします。
それを繰り返すのです。
復活しては病み、復活しては病み。
それを繰り返すこと数ヶ月。
白波の我慢の限界を超えた、突然のDM内容がこちら。
「クチュクチュ」
はい。もう無理です。頑張れません!!!
これ、孵化しかけてます!
なんの予兆も気配もない。
この完全アウトなDMが突然届くんですよ?!
本当に私のこと好きなんですか?
このムーブを女性にして、本当に好きになってもらえると思っているんですか?!
人間関係構築方法と円滑なコミュニケーションを学び直してこい!
そう思ってしまうのも仕方がないと思うんです。
このガチ恋ヤンデレキメラの卵。彼が訪れている仲良しの配信者仲間に謝罪をして、このモンスターの卵を駆除しました。
これ、既に孵化してない?
そう思ったそこの貴方!
まだです。
この卵は、沢山の時間を失い、投げ銭とプレゼントを贈った末──
報われたいという『執着』が芽生えて、初めて孵化をするのです。
孵化した時は、完全なモンスターですよ。
怖いですね!!!!
卵を駆除した白波。
そして平和が訪れた――
なんて油断をしていると、モンスターの卵はまた湧きます。
そう、モンスターの卵は潰しても、潰しても湧いてくるのです。
次回のモンスターの卵は……
俺達付き合ってるよねモンスター。
ご期待ください。
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