第2話:暖かいよ
お爺さんは私の襟元を乱暴に捲ったの。私のお腹には"初子"と書かれているんだって、帳場机の上で品質を確めるように見せたの。
「袋はいらないです」
由美子さんは左腕で私を抱いたまま、控えめな声でそう言った。
ガラガラと木製のガラス戸を開けて、私たちは外に出た。気が付いた時にはずっとここにいたから、初めて外に出たような感覚に陥った。じめっぽくて、埃臭いのが、一歩外に出ただけで消え去った。
まあるい黄色と白と、桃色。そんな空気が私たちを包み込んだわ。口を開けて、ほっぺに溜められそうって思ったよ。
赤ん坊のように斜めに抱かれていたから、眩しかったけど、私は目を閉じられないから我慢したの。陽の光をゆらゆらと遮る由美子さんの笑顔の横で、桜の花弁が舞う。
暖かくて、幸せだった。
日本人形のお初 シヨダ @shiyoda_occult
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