禍根石(かこんせき)


 私は逃げるしかなかった。


 もう限界であった…これ以上心身を狼狽してしまい、気が触れかねない状態に陥りそうであったからだ…。


 周囲は人はまだ起きていない時間帯だったのか、誰も通っていないのは運が良かったと私は思う。


 そして…私は纏めていた荷物を早急に手に取り、そのまま夜逃げの如くこの地域から出ていった。


  ビジネスホテルに着き、私は手当たり次第直ぐ様借りれるアパートを大至急探しだす…。


 本当は逃げ出してはならなかった…後悔を拭えどもうここに来た以上、先に進むしか…逃げるという方法しか私の頭には思い浮かず、気が付けば数日後…何とかアパートを見つけ、そこに移住し震える毎日が続いた…。


 ニュースにはなってないものの、あの地域では必ず問題が起きているのは確実だし、私を探っているに違いない…恐怖に怯える日々が過ぎていった。


 2日後…アパートの扉を叩く音に目が覚め、何気なしに扉を開ける。


 開けた瞬間、私に緊張感が走る…なんと警官と刑事が立ってたのだ…。


 刑事が私の名前を聞き、答えると「〇〇という地域で起きた事故について聞きたいことがあります。警察署まで同行できますか?」と言われそのまま私は警察署へ向かわされ、そのまま再び尋問に近い強い口調で私は事情聴取をされた。


 「なぜ逃げた。」「どうして警察に連絡しなかった。」「あなたが何か隠しているのは明白なんですよ!」「今までの事故死もお前が関わっているんじゃないか!」とさも私が関与している前提での聴取にどんどんとすり減っていく私の精神…。


 それが数時間も続き、…もう嘘でも私が殺したと自白してしまおうと口を緩ませ様と諦めていた時…聴取する刑事が交代した。


 交代した老刑事は、先程の強い口調を投げつけていた刑事とは真逆で私を諭すような口調で私に話しかけてくる。


 「一回深呼吸しましょう。」「ゆっくりでいいですので思い出してみてください。」「私はあなたがそんな事件を起こす様な人間とは思えません。」等の私を懐柔する言葉を耳にゆっくりと穏やかに動く波の様に響き、私は緊張が削がれていき次第に涙を流しながら「私は本当に何も分からないんです…!」と言葉を反復していた。


 老刑事は、愛想良く繰り返される言葉に頷きながら落ち着かせた後、「今日は帰っていいよ。」と言われそのまま私の聴取は終わりを迎えた…。


 私はそのまま返されたが…気は落ち着かないし、外は雪が降っているし…寒さのせいなのか、もしかしたら私が疫病神なのではないか等の思考が頭を渦巻き、ほぼ精神疲労でふらふらと歩いている内にいつの間にか家の前に到着していた。


 何とか気力を振り絞り玄関へ向かう。


 ふらふらと身体に力がはいらない。


 足にも力が入らず、その場で足から崩れ落ちてしまう。


 ぐったりと座り込んでしまう私の目線にふと道端に謎の物体を映される。


 見たことがある…物体…。


 あれは…石だ。


 ねじれが見れる…ドリルの形をしている…あの石に形状が酷似している…。


 気の所為だ…きっと似た石でしかない筈だ…。


 私は崩した足に力を無理に入れて這い出る様に家に入り込む。


 息が少し荒く、疲労も蓄積され、精神も限界に達していた…。


 それでも音が無いというのがより不安を積もらせ兼ねないので、仕方なくテレビの電源を付ける。


 テレビから丁度ニュースが流れた…。


 【今日の午後2時頃に、〇〇市の〇〇町の〇〇地区一帯で謎の集団死体が発見されました。死体の状態はどれも家の中で発見されていたとの事です…。警察は原因を解明中ですが、地下から噴出したガスによる中毒又は、窒息による死亡原因とみていて、地区一帯には近付かないよう、注意を呼びかけています。】


 信じられなかった。


 私が…私が離れた直ぐにこんな事が起きるなんて…。


 ガスによる事故死…そんな科学的に解明出来そうな出来事だとは、私は全く思わない。


 おそらく…死体は皆正座をしていた筈だ…。

 

 それがガスによって死亡なんて…あり得るのか?


 あんな急に…昨日今日会った人間が直ぐ死ぬのか?


 あり得ない…私はその死因に信用が疑わしく思う。


 原因、死因、共通点…そうだ…!石だ!あのドリル状の石を見た…!目撃した…!あれが原因だ…!


 しかも…私は今日見てしまった…玄関前で…あの奇抜なねじれた形をした石を…!!


 逃げる…逃げなきゃ…逃げさせて…!


 私は涙を流しながら、必死に足を動かして外から飛び出そうと玄関の扉を開いた。


 石が…あのねじれた石が…私の前に置かれていた。


 石は勝手に私の方に向かって倒れた。


 石が倒れたと同時に私は、発狂しながらリビングへ向かうと外の光に釣れられ、身体を窓側に向いてしまう。


 足に力が入らなくなり、徐々に力が抜け…まるで正座をさせられたかの様な姿勢になり…少しづつ意識が朦朧としていく。


 あの石はなんだ…あの石は何をさせようとしたんだ…私は薄れゆく意識の中で…薄れる思考で…私は最期まであのねじれた石で頭がいっぱいになりながら…死亡した。


 


 

 

 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 

  



 

 



 


 

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世、妖(あやかし)おらず ー禍根石(かこんせき)ー 銀満ノ錦平 @ginnmani

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