世、妖(あやかし)おらず ー禍根石(かこんせき)ー

銀満ノ錦平

ねじり


 私が住む地域は、空気が気持ち良く、森林も適度に茂っており、とても住みやすい場所だと高く評価されている。


 映る光景に、目障りな障害物も存在せず、私にとっては周囲の人々の環境含め、とても心地の良い住処に私は満足していた…。


 ある雪が降り始め、山が白装束を着飾り、白化粧に染めた日の頃…私は家2つ離れた場所に住む鈴木さんに親戚から頂いたお土産のお裾分けする為、歩いて向かっていると、白いカーペットと化している道の端っこに変わった石を見つける。


 その石の周囲の雪は積もっておらずに、まるで石自体が雪を掻き分けたかの様な跡を残しており、雪自体もドリルめいた形を司っている様に見え、更に丁度鈴木さんの方向を向いていたのだ。


 不気味に思えたものの、この地域には少なからず子供もいるし車の出も少ないからか道端で遊んでいる光景をよく目撃するので、子供のお遊びの跡だと納得してそのまま家へ進む事にした。


 歩いてゆくと鈴木さんの家に辿り着き、玄関のチャイムを鳴らす。


 ピンポーン…


 しかし反応が来ない。


 出掛けているのかと家の裏を回り、リビングの中を外から確認する。


 田舎というのもあり、基本この地域の家は近所同士の状況確認がしやすうようにと、カーテンを開けているので確認自体は容易であった。


 リビングには、付いたままのテレビの音が流れているだけでなかには誰もいな居らず、私は外からも声を掛けたが梨の礫…数十分経てど待てども、全く反応が無かったので結局そのまま帰ることに…。


 鈴木さんの家を見ても所々は明かりもついているし、車もちゃんとある。


 そもそも、もし外出をしていたら雪道に鈴木さんの靴の跡が見受けられる筈なのだが、見当たらない。


 私は少しの不安もあったが、よくそのまま近所の誰かの家へお邪魔していた…なんて事もあったので私は、心配すること無くそのまま帰宅した。


 翌日、鈴木さんがリビングの外で亡くなっているのを隣に住んでいた高橋さんが発見することとなる…。


 死因は凍死、最低でも私が鈴木さんの家を離れた後に鈴木さんが外に出たらしく、その後その場を動かず時間が経ち…というものであった。


 当初、私が最後に会ったのではないかと色々聞かれたが実際に私は会っておらず、リビングを覗いていただけだと警察にも言い、近所にも告げたが反応は薄く、結局私が鈴木さんに何かしてしまったのではないか…と疑惑が浮上してしまったのだ。


 私は、徐々に近所から突き放されている空気を感じて、嫌々ながらこの地域から身を引く事を決める。


 外から周囲を見つめながら過去この土地での記憶…積もった雪の掃除が大変だった辛い記憶…だけどこの土地や地域の人々の交流、特に鈴木さんと話す時間はとても面白く楽しく、そんな土地を離れるなんて私は嫌だ…と思いつつも、私の誤解すら吸い込み、染み込ませ、滲ませてしまった以上離れなければならないと私は涙を流しながらその日から徐々に荷物を持ち出す準備をし始める事となった。


 そんな次の日…鈴木さんの隣に住んでいた高橋さんが室内で凍死した状態で発見された。


 私は急いで高橋さん宅へ向かった。


 向かっている途中、数日前に見たあの奇妙な石を見かけてしまうが、その時の私は高橋さんの状況に焦り、まじまじと見た訳では無かったが、数日前に見た時となんら変わっておらず、唯一違ったのは石が高橋さん宅の方向を向いていた様な気がしただけであったが…兎も角私は急速に向かっていったのでこの辺りは曖昧である…。


 目で映った状況だけでもパトカーやら人集りを確認出来ていたが、改めて近付くとほぼ地域住民全員が野次馬しており、警官が人々に近付かないように注意喚起していたが、私の顔を見た一人の警官が、少し睨みを効かせた後私に駆け寄って来て、強い口調で質問と共に高橋さんに何が起きたかの詳細を投げ掛けてきた。


 疑惑を一生懸命払拭させつつ聞いたのは、『何故か全窓を開けた状態でリビングに正座をしたまま、何かに怯えた表情のまま死亡していた。』というものであり、私はその死に方が鈴木さんと近しく感じて、寒さのせいなのか恐怖の震えがより強いものとなっていた…。


 警官はその震えをこの件に関与しているのではないかと誤解され、再び聴取を迫られてしまい、そのままパトカーに乗せられ警察署まで同行されてしまう。


 それはもうキツく辛かった。


 状態は事件というより事故の定を取っていると警官は言いつつも、その言動からは明らかに私が何かしらの方法で関与しているのではないかという疑惑の念が出ていて、私は何度も「していない!」「私は何も知らない!」と感情込めた言葉を発言するも…全く轟いていないのか、その目線は私が犯人ではないのかと決めつけていた様に見え、私の精神は辟易してしまっていた…。


 しかしどんなに私を尋問したとしても、その2件に関しては全く関与していないし、そもそも周囲から事件の痕跡も形跡も無く、事故として処理している以上、私は無実である事には変わらず、何とかその日で聴取を終えて、家に帰る事が許されるも、私が帰宅している途中にパトカーが再び出動し、その方向が私の家だと気付き、私はその時に嫌な予感が脳内を巡り、寒い筈なのに緊張の汗が止まらずそのまま滑る心配を他所に駆け出していた。


 途中途中に転けてしまうが、構わずに私は駆け出す。


 嫌な予感は的中し、私が到着した頃には高橋さんの隣…五十鈴さん宅にパトカーと人集りが出来ていた。


 私に気付いた住民の一人がこちらに気付き、駆け寄ってくる。


 私は警察からの帰還により、精神が限界を感じており…向かってくる住民の一人がまた私を疑い罵倒する…と感じ取り、敵意の視線を向けた。


 しかし、住民…野高さんの表情はどちらかというと哀れんでいるというか同情心を私に寄せているというか…最低でも今から私を攻撃的な目で見てはいないと思い、一応に肩の力を降ろす。


 「大丈夫?一先ず私の家に来なさい。詳しい事話てあげるから。」


 そう言われ、疑念を持ちつつ身体は寒く誰かしらの暖かみが欲しくて着いていく事にした。


 身体を拭かせてもらい、炬燵に入れてくれると野高さんが先ず私の心境と状況を聞いてきた。


 どうせこのまま話そうが話さまいが私自身の印象は変わらないと自暴自棄に陥っていたが、それでも丁寧で親切な対応に、私は少し心を許すことにして心境を恐る恐る述べたが、野高さんは真剣に聞いてくれ、話し終えた跡に「お疲れ様ね…」と言いながら私の背中を揺すってくれて、私は感情のまま涙を流していた。


 野高さんは、私がパトカーに乗せられた後の話をしてくれた。


 「あなたが離れた後、本当に失礼だけど私はあなたがこの事件を起こしていて漸く逮捕されたんだって安心したの。だけど離れて少し経った時に五十鈴さんの家から悲鳴が聞こえたの。ここは少し離れてても何の障害物が無いからある程度の音なら聞こえてくるのよ。だから、それ聞いて私と他の近所の人達も慌てて五十鈴さんの家に向かったの。そしたら玄関と窓が開いてて、更にリビングにあった電源の切れたテレビを睨んだまま正座で死んでる五十鈴さんを家4つ先に死んでる道子さんが発見してたのよ。」


 私は背筋が凍るのを感じ取る。


 その後も急いでパトカーを呼んだだの、警官も何が何やらと困惑し、座り込んでいる道子さんを周囲で見続ける事しか出来なかったと悔やんでいるとか話していたが、今何が起きているのか私には分からず所々しか聴き取る事が出来ずにいた…。


 そして私が疲れ切っていたのを察したのか、「今日は泊まりなさい」と言われ、当初は断っていたが…押されに押され、結局泊まることとなってしまう…。


 布団の準備をしている野高さんに私が話しかけようかと迷っていると、ふと何かを思い出したのか私の方を振り向いて、とある物を見かけた…と不思議そうに話し出す。


 「そういえば…私五十鈴さんの家に向かってる時に変なの見ちゃったのよ。」


 「え?なんですかね?」


 「なんていうのかしら…ほら、あの周辺って一本道があるじゃない?そこにね?変な形の石があったのよ。」


 私は嫌な予感がした。


 野高さんは話し続ける。


 「それが…えっと…あ、そうそう!上に向かってねじれてる形…なんて言えばいいのかしら?」


 「もしかして…ドリル…ですか?」


 「あ!それそれ!ドリル!ドリルみたいな形した石がね?置かれてあったんだけど…それが偶然なのか五十鈴さんの家を指していたのよ…。」


 ドリル状の形をした石…私には既視感のある…鈴木さんの家に向かう際に見かけた石の形もドリルの形をしていた…。


 それだけではない…記憶を思い正せば、高橋さんの宅へ向かう途中でも見かけていた気がする…。


 いや…あれは気の所為ではなかった…あれも私がドリル状だったと思う…するならば、もしかしたら…私の脳内で嫌な考えが思い浮かんでしまう。


 私は慌てて、外に出て周囲を見渡す。


 外は暗く何も見えない。


 しかも、積もった雪が普段邪魔をしない視界を遮っている。


 私が険しい顔で外に出て行ったのを心配した高橋さんが駆け寄ってくる。


 「どうしたの!?」


 「いや…すいません…物音がしたのでつい…。」


 「あなた今日は色々あって疲れてるでしょ?ほら、もう寝ましょう。」


 実際私も疲れ切って狼狽している節があり、もしかしたら神経が苛立ってしまっているのかもしれない…そう思い、高橋さんのお言葉に甘えて、そのまま就寝した。


 朝…私が目を覚ますとすでにリビングには光が差し込み、高橋さんが先に起きているのか確認する為、リビングの扉をゆっくりと開く…。


 確かにそこには高橋さんはいた…。


 しかし…外に体を向け、正座の体勢で動かない…。


 私はこの時点で嫌な予感がしてしまった。


 「高橋さん…。」と声を掛けるも反応が無い。


 私はその場から急いで逃げ出した。


 外は晴れ晴れとしているが道は雪が積もっていた。


 そして…それは現れてしまっていた…。


 高橋さんの家を出た目の前に…。


 あの石が…ドリル状の形をした石が…家の方向に向いていた。


 


 


 



 

 


 


 

 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 

 

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