影の鍛錬

夜の訓練場は、青白い月明かりに照らされていた。

昼間の喧騒が嘘のように静まり返り、

風が草を揺らす音すら、遠慮がちに聞こえる。


セラは、柱の陰に身を潜めていた。

手には小さな詩帳と、細い筆。

視線の先には、ひとり剣を振るうレオナルドの姿があった。


レオナルドは、上着を脱ぎ捨て、

汗に濡れた髪を振り乱しながら、黙々と剣を振っていた。

その動きは正確で、鋭く、そして――どこか、苦しげだった。


セラはそっと筆を走らせた。

レオナルドの動きに合わせるように、言葉が生まれていく。


「夜の剣」


月夜を餌に酒に酔いしれ

酒場の喧騒響く頃


ただひとり、剣を振る影あり。

皆月に見とれ、影を知らず


その刃は

敵を斬るためか

いや

自を切るためか


頬を伝う光は

汗か涙か

正体を知らず



セラは筆を止め、そっと詩帳を閉じた。

王子はまだ、剣を振り続けている。

その姿は、まるで誰かに許しを乞うているようだった。

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宮廷詩人は心を知らない 月見だんご @tukimidanngo37110

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