腹黒王子
玉座の間を出たセラは、侍女の先導により王子の私室へと向かった。
長い回廊を抜け、重厚な扉の前で足を止める。
三回のノック音の後「入れ。」というどこか冷たさが混じった声が聞こえた。
扉が開くと、そこは広くも飾り気のない部屋だった。
書斎として使っているのであろう高価な机と椅子。
机の上には紙の資料が山積みになっていた。
セラの身長よりもはるかに高い本棚と
部屋の壁に貼られた地図。
詩の香りはどこにもない。
扉が閉まる音と同時に、空気が変わった。
「……ったく、好き勝手しやがって」
レオナルドは玉座のときの丁寧な口調をかなぐり捨て、
机の上の書類を乱暴に放り投げた。
「詩人だと?癒しだと?冗談じゃねぇ!」
セラは部屋の中央に立ち、黙ってレオナルドを見つめていた。
レオナルドは彼女に背を向けたまま、苛立ちを隠そうともしない。
「お前、何ができるんだよ。
詩なんかで、戦争を防げるのか?」
セラは答えない。
その沈黙が、レオナルドの怒りをさらに煽る。
「黙ってりゃいいと思ってんのか?なんか言えよ。
さっきからなんにも言わないの気味悪いんだよ。」
レオナルドが振り返りセラを睨んだ。
その目は冷たく、けれどどこか疲れていた。
「詩で戦争が防げるのか。
詩が俺になんの利益を与えるのか証明しろ。
証明できないのなら帰れ。」
少しの沈黙の後、
セラは、薄紅色の唇を静かに開いた。
「詩は、証明するものではありません。
ただ、残るものです。」
空気静かにを震わせるような、透き通って凛とした声。
レオナルドは一瞬、言葉を失った。
だが、すぐに視線を逸らし、手を振った。
「……チッ。これ以上話しても時間の無駄だ。
いいか、俺の邪魔だけはするな。
それができねぇなら、今すぐ出てけ」
セラは一礼し、静かに部屋を後にした。
「……詩なんかで、誰が救われるってんだよ。」
扉が閉まると、レオナルドは深く息を吐いた。
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