完成形を求める声に、Yetと伝える。

　先に一つ伝えておきたい。

　この創作論に「完成形」――攻略法や、ゴールを求めるなら、期待はしないほうがよい。

　かなり紆余曲折を経ている。作者様の導線作りが秀逸で、ついつい次の話をと手を伸ばしてしまうのだが、
　その先にはさぞや素晴らしいゴールが……と思うと、肩透かしを食らうかもしれない。

　しかし、この作品には血が通っている。その一点が構成を納得させるし、こうあるべきだと思わせてくれる。

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　血が通うとはどういうことか。

　全容は是非とも読んでいただくとして、その中のひとつだけを説明するなら、「うわっ…このキャラ、強すぎ…？　問題」だ。
　
　話がストンと回りすぎる。本気を出せばトラブルなんて起こらず円満解決してしまう。
　それだと、本来描きたいこと（テーマ）が出来なくなる。しかし歪めてしまうと、それはそれで話がおかしくなる。

　これは連載を続けると、多くの創作者がぶつかる。
　作品の人気以前に、作るときでさえ数多の苦悩が待ち構えているのだ。

　作者様の自作を引き合いに出しながら説明されるため、納得感もある。
　実際に書いてみないと分からない部分だ。
　
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　私が本作から読み取ったことは、ある意味、この創作論の辿る道が、そのまま作品に対する姿勢なのだろうなということだ。

　読者からすれば、最初から完成されたものが出てきてほしい、体験を消費したいという感覚があるのだが、

　自分のテーマを込める人にとっては完結済みのものというより、その過程こそがその人の唯一の作品となる。

　だからこそ、何かと急かす風潮に、Yet（まだだよ）と答える気概が求められるのかなあと思った。